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愛しいひと… 23にしおりをはさみました!
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愛しいひと… 23
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「アキラがいない?どういう事だ。それは……」
「申し訳ございません」
セベクの足元には老女が身を投げ出している。
「昨夜はアヌビス館ですごしていると……報告を受けたが、違うのか?」
「昨日のお昼は……アビス殿と寝所でご一緒でいらして……アビス殿のお帰りと共にお姿が見えなくなりましたので、てっきりアヌビス館に伴われたのだと思っておりました。
でも……」
「ちょっと待て」
椅子から立ち上がったセベクが老女の側に片膝を立ててしゃがむ。
老女はセベクの制止を無視して続けた。
「奥方様のお着替えを届けに侍女がアヌビス館に赴いたのですが、アビス殿は昨日ここから戻られてすぐ、駐屯地にお出掛けになっていて……そちらに伴われたのかと連絡してみたらそもそも……奥方様を連れ出してはいないと。
アビス殿はすぐにこちらに参られます」
今まで気丈に振舞っていた老女の目から涙が零れ落ちる。
「丸一日以上気づかなかったの……か?」
動揺を隠せないセベクの声が震える。
「申し訳ございません!!」
セベクの脳裡を悲観的な思考が駆け巡る。
「誰も……何も見ていないのか?
護衛や【影】は?」
「わかりませぬ……
はじめはアビス殿がお帰りになって、おやすみになっておられるとばかり……
様子を見に行った侍女がもぬけの殻の褥を見つけたのですが、上掛けと敷布が無かったので包んでお連れになったと思っておりました。
あと……」
「何だ?」
「関係ないかもしれませんが、蟷螂の籠が壊れていて、蟷螂が居りませんでした」
アキラを拉致して飛び去った禿鷹を追って、本来蟷螂ではあり得ない遠方まで、またあり得ないスピードで飛んだニセハナマオウカマキリ、アキラ命名【マモ】は最後の力を振り絞ってクシュを目指していた。
彼の羽の傷みが激しく、浮遊出来るギリギリの大きさと、身体の大きさに比例したスピードとの兼ね合いを考慮し、今は50cmほどの体長で飛んでいる。
往きの倍以上の時間をかけて【マモ】は漸く到着しようとしていた。
夜間の移動は思慮した以上に大変だった。
捕食動物に狙われた事も一度や二度では無い。
その度に本来の姿に大型化して追い払い、斃してきた。
……そのすべてが、もうすぐ報われる。
蟲の王、ケプリの館は森林のなかにある。
そこにボロボロの姿と成り果てた【マモ】が、最後は上空から堕ちるようにして漸く到着したのは、鰐館でセベクが報告を受けていた、丁度同じ頃だった。
最後は地面に叩きつけられて遠のきそうな意識の中、異常に気付いて近づいてきた眷属に王への取り次ぎを頼むとすぐに王が駆けつけてきた。
……ケプリが直々足を運ぶ、それほど異常な状態……
「アキラ殿の蟷螂ではないか……
これは……一体、如何した?」
『王……昨日、天女様が狼藉者に攫われました。犯人は長毛族の鬣犬……
隠れ家をつきとめて参りました』
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