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18歳以上ですか?
233にしおりをはさみました!
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誰かが言い出すのを待ってたように、一人、また一人とつられてやっぱりちゃんとした出し物をやろうという話になる。
展示物だろうと結局作るなら時間も掛かるし、どうせ同じに時間をかけるならせめてもっと楽しめそうなものにしようという事にまとまった。
とはいえ受験生って事ももちろん考えて、なるべく一人一人の負担を少なくするようにそこは考える。
そんな都合のいいものがあるのか、とも思ったが、クラスみんなで考えると案はそれなりに出る。
話し合った結果、アイスクレープの模擬店に決定した。
もう出来上がっていて調理や包装の手間が無いもので、冷凍庫は調理室に余っているものを使えるらしい。
衣装はそれぞれが白地のワイシャツを持ち込んで、あとはクラスでサロンだけ揃えて買えばいいかという程度におさまった。
特に捻りもない喫茶店だし、なんならいつものバイト先と変わらないから俺的にはいまいち物足りないけど、まあ展示室になるよりは断然マシだ。
「やはり結城の影響力はすごいな。クラスメイト達がお前の一言ですぐに活気づいていた」
昼休みになったら、予想外に有坂に褒められた。
昔から周りの奴は人の事ハブるくせに、だけど俺が言う事にはやたらやる気になって忠実だ。
これがカリスマ性ってやつか。
「…まあ受験も大事だけど、気晴らしはないと息が詰まるからな」
「そうか。ちゃんと考えていて偉いな。クラス委員らしくみんなを引っ張っている」
「まーなっ」
やばい。有坂が褒めてくれる。
嬉しくてソワソワしながら受け答えしていたが、まだ肝心なことが決まってない。
俺は有坂と楽しむために文化祭の企画に積極的になってたんだ。
今年も有坂と一緒に回りたい。
でも有坂は受験勉強に専念したいって言ってたし、もしかしたらあんまり文化祭には乗り気じゃないかもしれない。
有坂の迷惑になるような事はしたくないけど、でも聞いてみるだけ聞いてみたい。
「…あ、有坂、今年も俺と一緒に回ってくれるか?」
ちょっと戸惑いながら聞いたら、有坂が面食らったような顔をする。
だけどすぐにコクリと頷いた。
「もちろんだ。確認せずとも当然そうするものだと思っていたが」
「――うんっ」
当たり前のようにそう言われて、堪らなく嬉しくなる。
やっぱり有坂は俺の事大好きだ。
素直に愛情を受け取って、これで残すところはあとハルヤンと仲直りするだけだ。
「ところでゲーム研究会の方はどうするつもりだ」
「――えっ?」
すっかり忘れてた。
めちゃくちゃ忘れてたけど、そういや俺はゲー研の会長だった。
同好会も文化祭に向けて当然何かしら企画はするべきだし、去年会長もそれをやってた。
まさかこの俺がそんなことを気にしてやることになるとは。
とはいえ水瀬も俺が受験生って事は気にしてくれてたらしく、新人二人とそれなりに企画を進めてくれていた。
さすが俺が育てた後輩達だ。
「ラインハルト様、こんな感じでどうですか?」
「ふーん、悪くないな。許可する」
「有難うございますっ」
参加型の対戦ゲーム企画をやるらしく、ちゃんと賞品も用意するらしい。
本来なら同好会だからそんな予算はないけど、この部屋にはもう全然やってないゲームも多い。
その辺を整理がてらに売っぱらって、予算を作るらしい。
「ふむ、整理なら俺が担当しよう。前からこの部室には余計な物が多いと思っていた」
「おやゼタス。まだ在籍していたのですか」
「もちろんだ。水瀬、俺は文化祭当日、お前にリベンジを申し込みたい」
「はい?」
水瀬と俺の目が丸くなる。
いきなり有坂は何を言い出してるんだ。
リベンジとか何のことかと思ったが、どうやら前に水瀬にゲームで負けたことをまだ気にしていたらしい。
あんなの誰がどう見ても水瀬の初心者イジメだったけど、確かあの時は有坂が煽られて俺を賭けたせいで、水瀬と一緒に帰る羽目になったんだっけ。
「ちょ、有坂っ。いくらリベンジって言ったって、さすがに水瀬に勝てるわけねーだろっ」
「心配ない。以前負けた日から、コツコツと毎日決まった時間を家で練習し続けてきた」
「マジかよ」
前に負けた時って、確か会長の送別会の時だよな。
一年とまではいかないけど、それくらい毎日やってたってことか。
いつの間に。俺に黙って。
さすがの上昇志向というか、野球部の昼休みの練習もそうだったけど、少ない時間でも毎日コツコツと積み上げてくスタイルは変わらない。
「…へえ、少しはゲームが出来るようになったって事ですか。まあ僕はあれ以来あのゲームは触っていないので、いいハンデになるかもしれませんね」
「そう言い訳されると困ると思い、事前にリベンジを申し込みにきたのだが?」
「――なるほど。本気を出してもいいと?」
有坂の言葉に水瀬があっさりと煽られる。
ビリビリと二人の間に火花が散ってるが、それより有坂がコツコツ練習してたってことは、有坂の家にゲーム機があったってことか。
それってこれからいつでも遊べるってことか。
「それでは文化祭ですし、僕が勝ったらラインハルト様の後夜祭の時間は頂きますね」
「ふざけるな。たかがゲームの勝敗如きで賭けられるほど、結城は安くない」
「なるほど。逃げるのですか」
「――いいだろう」
そして前と全く同じ流れで有坂まで煽られている。
でもさすがに高校最後の文化祭なのに、後夜祭を有坂と過ごせないとか俺は絶対嫌だ。
そんなの致命的だ。
前回みたいに一日帰りを送るのとはわけが違う。
「えっ!?勝てたら後夜祭、結城先輩を独り占めできるんですか?」
「うわ、それすごい賞品っ。髪切ってこなきゃ…っ」
そしてなんか新人二人も混ざってきた。
対戦は外部の人に向けた企画のはずなのに、なぜかゲー研内で戦争が勃発した。
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