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存在しない名称にしおりをはさみました!
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存在しない名称
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処置室と書かれた場所へと連れられ、設置されている簡易ベッドへと寝かせるように促される。
「彼は、いったい……?」
横たえられた懐里とオレを交互に見やり、男は、不審げに眉根を寄せた。
懐里が調子を崩したときや、薬をもらうときは、Ωという性もあり、もっと大きな病院へ連れていっていたので、ここへ連れて来たことは無い。
「同居人…、です」
そうとしか言えなかった。
番でも、家族でも、恋人でもないオレたち。
第3者に説明するための名称は、それしかない。
ぐっと握り込んだ手に、空のシートがくしゃりと、拉げた。
「こ、これ」
折れ曲がった空のPTPシートを、男へと差し出した。
「避妊薬?」
シートを見ながら、きゅっと眉根を寄せた男が不満気に言葉を紡ぐ。
Ωか…呟いた言葉に、男の視線は、忌まわしげに懐里を見やった。
「そう。1枚分、全部飲んだっぽくて…っ」
焦りながらも紡ぐオレの言葉に、男は顔を余計に顰める。
苛立ちを逃がすように瞳を閉じた男は、懐里へと身体を向けた。
簡易ベッドに寝かせた懐里の頬に触れ、目の下を引く。
「悪いけど、外で待ってて」
男は、懐里の診察を始めていた。
言葉にも、不安なオレは、そこを動けない。
「こんなものを多量に飲んだくらいでは、死にはしないから」
オレに背を向けたままに、しっしっと追い払うような仕草をする男。
ここに居たって、オレは、なんの役にも立てない。
「よろしく、お願いします……っ」
頭を下げ、処置室から出た。
処置室の目の前にあった長椅子に、どかりと座り込んだ。
一気に訪れる身体の脱力感に、両手で顔を覆い、項垂れた。
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