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何の役にも立てないβにしおりをはさみました!
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何の役にも立てないβ
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ここに居る間に、また自傷されても困る……。
懐里の過去を話すしかなかった。
αに戯れに頸を噛まれ、捨てられ、傷ついた過去。
喪失感に、自殺を図ったコト。
暫く、発情期の度に荒れていたコト。
やっと落ち着いてきたのに、αに会わせてしまい、様子がおかしくなっていたコト。
「申し訳ないんだけど、注意してて欲しい……」
懐里のコトを話す度に、胸が潰れた。
守ってやりたいと思うのに、βのオレは、何の役にも立てていない。
心配するあまりに、返って懐里の傷を抉った気さえする。
苦しくなる胸中に、顔を両手で覆い、俯く。
涙こそでないものの、息苦しさに、吐きそうだ。
「あぁ、わかった」
男の手が、オレの頭に乗る。
元気づけるように、ぽんっと叩かれた。
オレの頭に手を乗せたままに、男は腰を上げた。
「彼の保険証、持って来てる?」
男の声に、オレは、すべてを置いてきたことに気がつく。
財布も保険証も、スマートフォンすら家だ。
自分の醜態に、唖然としたままに、顔を上げた。
「あぁ…、すいません、財布も保険証も、家です……取ってきます」
腰を上げるオレに、男は、小さく手を振った。
「いいよ、いいよ。明日、迎えに来るだろ? そのときで。君は、何回かうちにかかったことあるよね? 君の名前と電話番号教えて…、そっから、君のカルテ探すから。彼の住所、君と一緒でしょ? あと彼の名前だけ、教えておいてもらっていい?」
男は白衣のポケットからメモ帳とボールペンを取り出し、オレに渡す。
オレは、言われた通りの情報を書き出し、男へと返した。
「独りに出来るくらい落ち着いていたなら、彼の中で消化できていると思うんだけど……」
懐里が寝ている診察室へと瞳を向け、独り語ちるように呟いた彼は、首を傾げていた。
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