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第3章 13
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「っ…李土様っ!」
一向に自分の方を向いてくれない李土についに焦れたのか、その子の手が李土の服の裾を掴もうとするのが見えたその時、
「おっはよーさ〜ん!なんやー?朝からえろー騒ぎやけど?なんかあったん?」
綾人と同じ音楽学部で、数少ないオメガの友人でもある向坂琥珀が、ひとなみを抜けて綾人達の前に歩み出てきた。
向坂はさっと目で周囲を観察しながら、李土の近くにいた田島と、その田島を完全スルーしている形の李土を見て大体の状況は分かったのか、
「おぉ〜、なんや桜庭くんは今日も相変わらず人気もんやんねぇ〜。えらい美形さんやからボクも朝から生眼福やわぁ〜」
と、
李土に笑いかけつつ、綾人の方へと近づいて来る。
そしてそのままいっそう笑みを深めて、
「おはようさん綾ちゃん。今日1限目ボクと一緒やから、教室一緒いかへんか?」
固まっている周りの空気など読む気もない。とばかりに僕に声をかけてきた。
「お、おはよう向坂くん。もちろん、一緒に行こうか。李土、いいかな?」
今だに綾人の腰を抱いて離さない李土に、綾人は向坂が一緒に同行してもいいか聞いてみる。
李土はと言うと、田島に向けていた無表情とはうって変わり、少し嫌そうな顔ではあったが、綾人の友人と一応認めている向坂には、ちゃんと対応する気があるらしい、
「…仕方ないね、いいよ。」
と、ちゃんと言葉を返していた。
そして僕達は、唖然と口を挟む間もなくその会話を聞いていた田島と、野次馬と化した周囲の人々を置き去りに、とっととその場を後にしたのだったーーー。
◇
空が晴れ渡り、雲ひとつない気持ちのいい青空が広がる朝のその日。
聖サンダルフォン大学で医学部を受け持つ、優秀な講師である伊藤純太は、朝から快活な彼の性格には似つかわしくない深〜いため息をその口から重々しく吐き出した。
その様子を見ていた教育学部担当の調月流華は、彼の表情の原因に心当たりがあるのか、苦笑いをしながら伊藤に声をかける。
「伊藤先生、もしかして見てしまったんですが?我が学園の名物となりつつある、桜庭李土親衛隊、通称『大名行列』今日も麗しの李土様の美貌を生で拝める至福のひととき〜を?」
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