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19 (過去 和也)にしおりをはさみました!
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19 (過去 和也)
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「女も親父も、赤ん坊には興味がなかった。
何しろ子供の名前も、面倒だからおまえが付けろと言われたからな。」
「…付けたのか?名前。まだ、小4のおまえに?」
大樹がびっくりして言う。
「付けたさ。
親父の命令は絶対だったし、それに、名無しじゃあんまりにも可哀想だったし。」
そうだ。
一生懸命考えて、本屋で名付け辞典まで読んで付けたんだ。
凛…と。
「親父と女は、二人でイチャイチャするのに忙しかった。その頃は仲が良かったからな。
親父は、結構良い企業に勤めてたし、金もあったし。
でも、子育てには、あまり興味がなかった。
仕方なく俺が子供の世話した。
見かねた近所の人が、児童相談所に通報して…女は上手いことやって鬱状態って事にして、子供は乳児院に入れられた。」
そうだ、あの頃の凛は、手ばっかりかかってた。
何しろ、触ると壊しそうで、でも世話しなきゃ凛が死ぬと思って…。
乳児院に送られる事になって、俺は心底ホッとした。
「中ニの時、弟が養護施設から、帰って来た。
弟は、四才にもうじきなろうかという年になってた。
親父と女は、一年ぐらい前から段々と喧嘩が多くなって来た。
ただ、親父も女も、外面は良かったから表面上は弟を迎える準備が出来たと児童相談所が思ったのも無理もない。
世間体から、面会にも、行ってたしな。
でも、実情は喧嘩ばかり。そんなところに弟が来た。」
「ちょっと待て!和也、おまえは?
そんな状態じゃ…おまえも…?」
「…俺は親父に、妙に気に入られていたし…女も一応俺には、何もしなかったし…。」
「…大丈夫だったんだ。」
ほっとしたように、大樹が言った。
「曲がりなりにも、自分のことは出来たしな。大丈夫だった。」
大丈夫…小遣いも貰ってたし、何不自由ない生活を送ってた。
ただ、…愛情が欠けていた。
「でも、弟はそうじゃなかった。
親父も、女も邪魔っけに扱ってた。
四つだし、大人の手が何かと必要だったし…勢い、俺が手を貸す事が多かった。」
…凛は…女に打たれる事が多かった。
親父からは、白い目で見られ…堪り兼ねて俺が手を貸す。
……あの頃の凛は、手が掛かったけど…可愛いかった。
回らない舌で、にいたん、にいたんって、学校から俺が戻ると付きまとってた。
俺は、気まぐれに可愛がったり、テスト前なんかだったら邪険に扱ったり…。
それでも、にいたん、にいたんって。
凛は、他の子供に比べると、手がかからない方だったと、改めて思う。
よく熱を出す以外は、大人しくニコニコして。
邪険にしたら、ゴネるでもなく諦めて。
可愛いがったら、有頂天になる事なく控えめにそっと手つないで嬉しそうに俺を見上げて。
女に打たれると、隅っこに行って震えてた。
ほっとかれると、大人しく絵を描いて遊んでた。
子供らしくない子供だった、と言えばそうなるが…。
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