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渡辺くんの不満。にしおりをはさみました!
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渡辺くんの不満。
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***
早朝の道場に竹刀のしなる音が鳴り響く。参加する訳でもなくただ入口に佇む黒装束の男が呟いた。
「どうゆう風の吹き回しだ」
「なにが?」
「お前が自主稽古など」
「普通じゃない?」
「普通ならいつもサボるな」
ご尤もな事を表情も変えず真顔で返すワンコを横目で見ながら竹刀を振り続ける。
「…何を考えている?」
「……」
「綸」
「……、て」
「?」
「スポーツで性欲を発散できるなんて真っ赤な嘘だな、て」
大殿から僕の監視役を仰せつかった頼光の忠実なワンコは眉根を寄せた。
「季行、相手してくれる?」
「……」
「あ、もちろん剣道のね」
「……」
僕はいま、とてつもなく欲求不満だ。
「朝から幼馴染みに白い目で見られたのも全部艮くんの所為ね」
いつもなら艮くんにあげる玉子焼きを独り占めし恨み言をいうと、艮くんは目をパチクリとさして「何が?」と返した。お互い見合える位置で真ん中には弁当箱と紙パックの牛乳が二人を隔ててる。
「…紙パックの牛乳なんて滅んだらいいのに」
「は?…大丈夫か?」
大丈夫なわけない。
かれこれ艮くん断ちをさせられて二週間あまり。毎日毎日お昼休みには顔を付き合わせてるとゆうのに艮くん断ちを強要されている。しかも。
「……艮くん」
無理くり境界線を越えようとすると、
「……あ"?」
完璧に気のコントロールを覚えた艮くんが鬼のような殺気を出してくる。なのに普段は無邪気に絡んでくるからとんだ生殺しだ。地獄て本当に在るんだな。
「……はあ…」
「な…何だよ」
「別に…」
「文句があんなら言えよ」
「艮くんに触れたい舐めたい噛みつきたい。あと×××を××して×××に×××したい」
「殆ど伏せ字じゃねえか!てか、勝手に俺で変な想像すんな!!」
艮くんが顔を真っ赤にして怒る。しまった。正直に答えすぎた。まあ後半の願望は行き過ぎたとして、
「…艮くんは?」
「あ?」
「何も感じない?」
艮くんが焼きそばパンを頬張るのをやめる。
「…別に」
あ。嘘だ。
思わぬところで綻びが出てきた。もうちょっとこの路線で押したらいけるかもしれない。
「艮くん、こっち見てよ」
「い、嫌だ」
「何で?ちゃんと目を見て話したい」
「…、」
「艮くん」
「し、しつけぇぞ、お前…!」
あ…ヤバいな。何かいま凄く押し倒したい。暴れるのを押さえつけて泣くまで噛みつきたい。血と涙でグチャグチャになって押し倒されてる艮くんとか考えただけで…
勃つ。
「艮くん」
いまなら刺し違えてもいいかも。
「ちょ……待っ…、」
ー ピロローン
艮くんの胸から間抜けな電子音が響いた。我に返った艮くんが慌ててそれをシャツの胸ポケットから取り出す。
「メ…メール!」
「……チッ」
てかケータイ持ってたんだ艮くん。
「…誰から?」
「ああ……妹」
僕も最近知ったのだが艮くんには歳の離れた双子の妹と弟がいる。これがまた艮くんと全然似てないのだけれど兄弟仲は悪くないらしい。メール文を読み終わったであろう艮くんの眉間のシワが縦に刻まれている。
「どうしたの?」
「あー、来週ピアノの発表会があるんだと。で母親が行けないから来いって」
めんどくせえ、とケータイを仕舞う艮くんだがその表情を見る限り迷っている。口は悪いがやはり艮くんも"お兄ちゃん"なのだ。
「行ってあげたら?」
「…目立つから嫌なんだよ」
たぶん自分が変に目立って妹さんに迷惑がかかるのが嫌なのだろう。確かに赤髪とピアノの発表会は相容れないかもしれないけど…そんなの引っ括めても艮くんに来て欲しいんじゃないのかな。
「あ」
「?」
「僕も行こうか」
「は?」
「二人なら目立たないでしょう?」
「いや目立つだろ、男二人で発表会なんて行ったら」
「そうかな?」
「いやでもまあ…渡辺は発表会顔か…」
発表会顔て何だろう。
僕の顔を見てウンウン唸ってた艮くんが顔を上げた。
「そうだな…二人で行くか」
デートだね。
そう言うと艮くんの張り手が僕の右肩に飛んだ。
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