アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
雨が止んだなら◇10にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
雨が止んだなら◇10
-
「ちょっ、涼太!待てよ!」
背後からの真守の声も無視して、この胸の動悸を隠すためにひたすら走った。気づいたときにはだいぶ進んでいて、後ろからまたバタバタと足音が近付く。
「というか、置いていくなよ……」
軽く睨んだ真守が呼吸を荒くしながら呟く。
「ごめん」
情けなく笑った俺はスーパーに戻るわけにもいかず、二人で並んで真っ直ぐ進む。この先は美容室や古ぼけたラーメン屋などが点々と並ぶくらいでほとんど何もない。隣の真守の、俺への愚痴を黙って聞いくぐらいしか、暇の潰し方が見当たらなかった。
「ーーあれ、雨?」
真守が呟くと同時に頬に冷たい何かが当たった。次第に地面を濡らす雨粒は多くなり、ポツポツと音を立て出した。
「うわっ、強くなってきた。傘持ってないし今日はもう帰るな」
「俺の家寄って行く?」
「いや、夕方からバイトだからいいや」
「傘くらい貸すよ」
「走って帰る!」
手で頭上を覆いながら走っていく真守の背中を見て立ち尽くした。
これからどうしようかと考えていると、買い物袋を持った主婦たちが慌ただしく帰って行く姿が目に付く。
そういえば桑原さんは、傘を持っているだろうか。
本格的な夏が訪れてから、雨は珍しかった。
猛暑の中濡らされていくこの場所は、涼しいというよりもじめじめとした蒸し暑さが増しただけ。どことなくあの日に似ているように感じられた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
44 / 54