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アルファムが、俺の頭にキスを落としてシアンに声をかけた。
「シアン、そいつを牢から出してやれ。正直に話したからな。ただし、二度と毒を入れられぬよう手を切り落とせ」
「え?ええっ!!だっ、ダメっ!!そんなのダメだっっ!!」
「なにがだ?本来なら処刑するところを軽く済ませてやるのだぞ。止める理由がわからん」
俺は、両手を握りしめてシアンを振り返った。シアンなら、一緒に止めてくれると思ったんだ。
だけど、シアンも首を傾げて不思議そうに言う。
「カナデ様?これはかなりの軽い刑罰ですよ?この犯人は、アルファム様の大切な方を殺そうとしたのです。アルファム様の仰る通り、本来なら見つけ出した時点で成敗されるべき罪なのです。それを理由を聞いて、命まで助けるというのですから、今までにない特例ですよ」
「そ、それでも…っ」
たぶん、俺が間違ってる。俺が甘いことを言ってるんだ。可哀想だ何だと言ってたら、罪なんて無くならない。悪いことをしたらそれなりの報いを受ける。当たり前のことだ。
俺が死んでいたら、この人はすぐに処刑されていただろう。
でも、俺は生きている。まだ手足の先が痺れているけど、元気だ。
だから、もういいよと思ってしまうのは、ダメなのだろうか。
俺は、止めるアルファムの手を振り解いて女の人に近寄り、鉄格子を握りしめる手をそっと包んだ。
女の人がハッとして、俺を見た後に泣き笑いの顔をする。鉄格子の隙間から片手を伸ばすと、俺の頬に触れた。
「カナデ様…、本当にごめんなさい。あなたが無事で、本当に良かった。あなたを殺そうとした私なのに、まだそんな優しいことを言って…。いいのですよ。私はどのような罰でも受けます。悪いことをしたのですから、当然です。だから、そんな顔をしないで…」
「でも…っ、あなたは命令されただけで…。俺を憎んでなどいないでしょ…」
「命令されても断ることも出来たのです。それを受けて実行に移したのは、わたしの罪です」
「そ…っ、でも…」
「カナ」
アルファムが、後ろから俺の脇に手を差し入れて立たせ、身体の向きを変えて抱き上げた。
「カナ、泣くな…」
そう言って、俺の顔を自分の肩に押しつける。
「後は頼んだぞ、シアン」
「はい」
静かな地下に足音を響かせて、アルファムが俺を抱えたまま地下牢を出て、城の中へと向かった。
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