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3にしおりをはさみました!
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シアンが机に置いたカップを取って、アルファムが一口飲む。
俺もシアンに勧められて、ミントのような爽やかな味わいの紅茶を飲んだ。
「美味しい…」
「そうだな。俺は酒の方がいいが。カナ、俺を見ろ」
カップを机に置いて、アルファムが俺の頬に手を添える。
俺もカップを机に戻すと、真っ直ぐにアルファムの目を見つめた。
「いいか。まず、薬を飲んでも、子供を宿す袋が出来るかどうかわからない。出来ても、そこに子供が宿るかどうかもわからない。子供を宿し易い身体というものがあるのか、子供の親となる二人の相性の善し悪しによるものなのか…。そして宿ったとして約二百八十日、激しい頭痛や吐き気、倦怠感に耐えねばならぬ」
「大丈夫だよ。俺は我慢強いから!」
「そうだな…。だが、ここからが問題だ。子供を腹から出す時に、女の数倍の時間がかかる。その上気絶するような痛みを伴うらしい。それだけならまだいいが…。子を産む時に、半数の男が頭の中に血が溜まって死んでいる。半数だぞ。俺は、カナがそんなことになったらと思うと、怖い。だから、なるべくなら知られたくなかったのだ…」
「…アル……」
確かに、医療が優れた俺の元いた世界でも、出産で命を落とす人がいる。
ましてやここは、魔法や不思議な泉の水で治療をする世界だ。
頭の中に血が溜まるってことは、脳の血管が切れて脳内出血を起こしちゃうんだろうな。ここでは、頭を開けて手術するとか出来ないもんな。半々の確率か…。せっかく産んでも、死んで赤ちゃんを見れないのは嫌だな。アルと離れるのも嫌だな。
でも、それでも。
「アル、俺を信じて。俺は大丈夫。絶対死なない。赤ちゃんやアルの為にも、辛いことにも痛いことにも耐えて、必ず無事に産むから。だからお願いします。俺は、アルの子供が欲しい」
「カナ…」
俺を見つめるアルファムの緑色の目が、揺れている。
あれ?と思う間もなく、アルファムが俺を強く抱きしめるから、顔が見えなくなった。
「わかった。ありがとう、カナ。俺の子供を産むと言ってくれて。だが、約束だぞ。辛かったら我慢するな。俺に頼れ。出来る限りの事はする。それと、死ぬな。これは命令だ。絶対に死ぬな…っ」
「うん、約束する。俺は死なない」
アルファムの声が震えている。
声だけじゃなく、身体も小さく震えている。
いつも堂々としたアルファムが、俺のせいで震えているんだ。
そう思うと、何とも言えない想いが込み上げてきて、俺はアルファムよりも大きく身体を震わせて泣いてしまった。
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