アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
73にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
73
-
少し薄暗い部屋の中から明るいバルコニーに出て、アルファムの隣に並ぶ。
その瞬間、先程よりも大きな歓声が響き渡った。
「わあ…すごいねっ」
「おまえは大人気だな。俺の時よりも皆が喜んでいる」
「そ、そうなのかな?」
「そうだ。ほら、手を振ってやれ」
「うんっ」
俺は、カエンをアルファムに渡すと、前に出て大きく手を振った。
すると更に大きな歓声が上がって、俺は感動して全身に鳥肌を立てた。
「アル…どうしよう。すごく嬉しい!」
「ふっ、まだ泣くなよ?今からカエンを紹介する」
俺は何度も頷くと、アルファムに抱かれたカエンの手を握る。
カエンは、アルファムや俺を見たり、広場を見たりと、忙しく頭を動かしている。
「カエン、皆に挨拶しようか。これからよろしくって」
俺がそう言うと、カエンは、きょとんと俺を見て、ふにゃりと笑った。
アルファムが更に前に出て、大きな声で言う。
「紹介しよう!俺とカナの間に産まれた王子カエンだっ!」
一瞬静まり返った広場に、城が揺れんばかりの歓声が上がった。
あちらこちらから「おめでとうございます!」とか「尊い黒髪だっ!」とかの声が聞こえる。
バルコニーから見る人々の顔は、皆笑顔だ。
俺は、歓迎されたことに安堵して、息を吐くと共に涙を流した。
それに気づいたアルファムが、片手でカエンを抱えてもう片方の手で俺を抱き寄せ、頬にキスをする。
「何を泣く?カエンが見てるぞ。泣き虫め」
「…こんなに喜んでもらえると思わなくて…。嬉しくて泣いてる…」
「おまえは民から好かれている。自信を持て。そのおまえが俺の子を産んだのだ。喜ばれぬわけが無い」
「うん…。炎の国の人達は本当に優しい…。俺、この国に来れて良かった」
「ああ。カナ、炎の国へ来てくれてありがとう」
「アルぅ…」
今までにも何度もアルファムに言われたことがあったけど、今この時に改めて言われて、感動で胸がいっぱいになった。
俺がアルファムの胸に顔を擦り付けていると、小さな温かい手が俺の頬に触れた。
顔を上げると、カエンが声を出しながら綺麗な緑色の目で俺を見ていた。
「カエン…心配してくれてるの?これは嬉しくて幸せで泣いてるんだ…。ごめんな…俺、よく泣くけど気にしなくていいからな?」
「あう」
カエンは、小さな手で、俺の濡れた頬をぺたぺたと触る。
その手の感触がこそばゆくて、俺はアルファムに抱かれたカエンを、アルファムごと抱きしめた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
276 / 427