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奏のひとりごとにしおりをはさみました!
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奏のひとりごと
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毎日、平和で穏やかで、幸せだな。
この世界に放り込まれた当初は、困惑したけど、最初からアルが助けてくれた。
二人で色んなことを乗り越えて、愛し愛され、男の俺を后にまでしてくれた。
そして元の世界じゃ絶対に有り得ないことだけど、男の俺が、愛する人の子供を生むことが出来た。
俺とアルの大切な子供カエンは、とても賢くて見た目も可愛い。
きっとこの先、アルに似て、強い男に育つだろう。
カエンの成長を、アルと一緒に見守っていきたい。
そう思っていたのだけど、もしかすると、その願いは叶わないのかもしれない。
俺は、この世界の人間ではない。
違う世界で生まれた人間だ。
不思議な空間を飛び越えて、この世界に呼ばれて来たけど、何かしらの影響を受けないわけがなかったんだ。
でも、この世界に来てからも、俺はずっと元気だったし、危険だと言われた出産も無事に成し遂げた。
だから、ずっとずっとアルと一緒に歳をとっていくと信じていた。
空間を飛び越えるということは、実はすごく身体に負担がかかっていたんだな…と、この世界に来て十年以上経ってから、やっと気づいた。
俺の身体は、この世界に来た瞬間から、徐々に徐々に、本当に少しずつ、弱っていたんだ。
カエンが五歳くらいの頃から、とても疲れやすくなり、十歳を過ぎた頃から、頻繁に熱を出すようになった。
医師に診てもらっても、どこも悪い所は見当たらない。
薬を飲んでも、直後には回復するけど、全快はしない。
アルをはじめ周りの皆は、原因がわからなくて首を捻っていたけど、俺は何となくわかっていた。
俺の身体に限界が近づいている。
あと何年持つのか分からないけど、命の期限が迫ってきている。
アルを悲しませたくないけど、どうしようもない。アルやカエンと離れるのは寂しくてたまらないけど、覚悟を決めよう。
俺は、残された時間で、アルを、カエンを、目いっぱい幸せにしよう。大好きだと伝えよう。
とんでもない経験をした人生だったけど、とても幸せだった。世界一、宇宙一、幸せだった。
アル…、俺はアルを残して先に逝ってしまうけど、許してね。残された時間で、たくさんの愛と感謝を伝えるから。
そしてアルもカエンも、俺の分まで長く生きて。
アル、カエン、愛してるよ。
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