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9にしおりをはさみました!
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9
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俺の手の上に重ねられた父さまの手に、力が入る。
俺は、心配そうに見てくる父さまに、ニコリと笑った。
「これらの炎をちゃんと使えるようになったのは、ここ二年ぐらいの話。でも子供の頃から、指先に極小さいのは出せてたんだ。…俺、面白くないことがあったり拗ねたりしたら、いつも人の来ない塔の上の部屋にこもってたんだけどさ…。カナが毎回捜しに来てくれるの。それで黙って俺の話を聞いてくれてるうちに、俺の機嫌も治ってさ…。その時に『俺はいろんな色の炎が出せる』って見せたんだ。カナは驚いてたけど、『カエンは特別なんだね、すごいね』って抱きしめてくれた。炎の色によって温度が違うから、強さも違うかもってことも教えてくれた。でも、むやみやたらと使うと、不審に思う人が出てくるかもしれないから、ちゃんと扱えるようになるまでは秘密にしておこうね…って約束したんだ」
「…カナは、知ってたのか…」
父さまは、驚いてはいるようだけど、怒ってはいなかった。
「うん。他には誰も持っていない魔法の力を俺が持ってるのは、異世界から来た自分の血を引いてるからかもしれない…ってカナは気にしてたんだ。悪い方に捉えられて俺が責められたら可哀想だからって、父さまにも皆にも内緒にしてた。そのうち俺が、国も民も守れるくらいに強くなったら、話そうと思ってたんだ。ごめんね父さま…」
「いや…いい。カナは、異世界から来た…自分が、俺の隣にいても…いいのかという思いを、常に…持っていたからな。俺がいいと何度言っても…その思いは…消えなかったようだ。確かに…中には、少ないとはいえ…カナのことを、よく思わない者も…いたからな。おまえが、不思議な…炎を使ってるのを見て…責め立てる者が…いたかもしれない。…だが、俺には話して欲しかったぞ」
「カナも話そうと思ってたみたいだよ。でも父さまの前で使って見せて、驚かそうっていう話になったんだ。『あまり驚いたりしないアルがどんな顔するか楽しみだね』って、すごく楽しそうだった。…でも、見せる前にカナはいなくなってしまったから…」
「そうか…。俺は…カナにはいつも、驚かされることばかりだった。本当に…毎日が幸せだった」
父さまは、疲れたのか、顔を上に向けて目を閉じた。
父さまの目じりから、涙が一筋、こぼれ落ちるのを見た。
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