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18歳以上ですか?
12にしおりをはさみました!
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12
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二日ほど、父さまは寝たり起きたりを繰り返していたけど、三日目には起き上がれるようになった。
寝たり起きたりしている間も、俺とローラントおじさんは父さまの部屋にいて、話しかけたり世話をした。
起き上がれるようなってからは、三人で母さまの石碑の前まで歩いて、そこでお茶を飲みながら話をした。
七日目には、父さまの肌に残る火傷の跡もほとんど消えた。ただ髪の毛だけは、急激に伸びたりはしないから短いままだ。
そのことを気に病む俺に、父さまは笑って言った。
「カエン、そんなに気にするな。頭が軽くなったし洗いやすくていい。俺は気に入ってる。もっと前から切れば良かったとも思ってるぞ」
「でも…綺麗な髪だったのに」
「綺麗なのは、おまえやカナの黒髪の方だ。おまえの方こそ、伸ばしてみてはどうだ?」
「えー?似合うかなあ」
「おまえは俺と顔が似てる。似合うと思うぞ。それに、ふとした瞬間、カナにそっくりな時がある。俺は…カナの伸ばした姿も見てみたかった。おまえが伸ばせば、その願いも叶うのだが…」
俺と同じ緑色の目で、悲しそうにジッと見つめられて、俺は根負けしてしまった。
「わっ、わかったよ!俺も王になったし、威厳が必要だし?似合うかわからないけど伸ばしてみるよっ」
「うむ。ますますいい男になるぞ」
「それはどうかと思うけど…。父さまも一緒に伸ばそう?」
「俺はこのままでいい」
「なんだよそれ。ずるくない?」
俺が父さまと笑い合っていると、ローラントおじさんが部屋に入って来た。
「ふふっ、とても楽しそうですね」
「おじさん!父さまが、人には髪の毛を伸ばせって言うくせに、自分はこのままでいいって言うんだよ。おかしくない?」
「おおっ、それはいい。ぜひカエンは伸ばしなさい。綺麗な黒髪が映えて、迫力のある王になる。兄上の言うこともわかります。今の兄上を見て、僕も切ろうかと思ってましたから」
「えっ。おじさんも短くしちゃうの?綺麗な髪なのに…」
「僕のは、兄上みたいな鮮やかな赤色ではないから。綺麗ではないよ」
「綺麗だよ。毎日見て慣れてるから、自分では気づいてないだけだよ」
「カエン…。その言葉、おまえに返すよ。おまえの黒髪は、とても美しい。カナデからの贈り物だ。大切にするんだよ」
「おじさん…」
そうだ。昔は嫌だと思ったこともある黒髪だけど、今はとても誇らしく思っている。
それに黒髪だけじゃなく、俺自体が、母さまがこの世界にいたという証。
俺自身も含めて、この国の民を守ろうと改めて誓った。
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