アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
* Scent.1 *にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
* Scent.1 *
-
買ってもらったばかりの文房具は、立花が学校で目を離した隙になくなったり汚されたりしているので、買い替えるためのお金も馬鹿にならない。
父親の透[トオル]はほぼ毎日5時過ぎに帰宅する。
今朝から何1つ変わっていない散らかった部屋を見渡して、立花に向けて舌打ちをした。
下手に機嫌を取ろうとせずに、避けていると捉えられないように自分の部屋には行かず、立花は手元のノートに顔を落とす。
「……今日も早いのね」
「そりゃあ、立花が心配だからな」
へらっと笑いながら、透は立花の頭を雑に撫でる。心配なんて口先だけだ。
オメガのせいで苛めを受けていると訴えても、体裁を気にするばかりで動いてはくれなかった。
──オメガだって分かっても、僕の身体は何も変わらなかったのに。どうして。
診断通知の紙切れで、あんなに優しかった両親は変わってしまった。
こんなことになるなら、検査なんて絶対に受けなかった。
「心配? 仕事を休みたいだけでしょう。早帰りしても手当てなんてつかないんだから」
「ああ? だったらお前が外に出て働けばいいだろ!」
喧嘩しないで、なんて口を挟める訳ない。だって自分が原因なのだから。
いなくなりたい。消えてしまいたいって何度も思った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 263