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* Scent.1 *
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「待ちなさいっ、立花! 立花はお母さんとお父さん、どっちが正しいと思うの?」
どちらを答えても不正解で地獄だ。立花は俯きながら小さな声で、「どっちも悪くない」と答えた。
そうなるとヘイトは自ずと立花のほうへ集中する。
「お父さんとお母さん……喧嘩しないで。僕には、どっちも大切なの」
眠れない夜に何度も願った。
オメガなんて診断は嘘で、2人は怖い夢を見ただけだと笑って立花を迎えてくれる。
もうそんな朝は2度と来ない。
血走った目がぎろり、と自分を捉えたと思ったら、床の上に張り倒されていた。
じんじんと打たれた頬が疼いて、呼吸が速くなる。
「どの口が言ってんだ……なあ、立花!? お前のせいでなぁ、俺達は恥掻いてんだよ。言っておくが立花は俺の子じゃないからな」
「いいえ、立花は私達の子よ。診断と一緒に血縁関係も調べたんだから。私の親族にはオメガの血縁はいないのだから、あなたが原因だとしか考えられない……っ」
ベータ同士の両親から生まれたオメガ。
奇妙な噂はそこらを出回るのも早かった。
同級生にからかわれた言葉を、そのまま真綾にどういう意味かと聞いたら、顔を悲痛に歪ませたのを今でもはっきり覚えている。
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