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* Scent.7 *にしおりをはさみました!
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* Scent.7 *
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今は表情をマフラーの下に隠しているから、涼風にも他の誰にも知られない。
引き締まらない表情のまま、立花は駅までの緩い勾配の坂道を下った。
見上げた涼風の目の下には、眼鏡のフレームで一見隠れているように見えるけれど、蓄積した疲労が色濃く残っている。
普段、家では過密なスケジュールに忙殺されていて、食事さえ論文執筆の片手間にとるような生活をしていたからだ。
多忙な涼風が、マフラーをつけている今朝の立花の格好を覚えていてくれたのが、嬉しい。
涼風がいかに快適に過ごせるかを考えて、立花はなるべく彼と話しかけないように、認識されないようにしていた。
過度な気遣いは涼風のほうにも伝わっていたようで、指摘されたとき、立花はかえって安心してしまった。
始まったばかりの生活は、なかなか上手くいかないなぁ、と思う。
涼風には返せないほどの大きな借りがあって、立花は1歩よりも遠く、2歩も3歩も彼の後ろをついていっている。
涼風の存在は綺麗で眩し過ぎるから、そのくらいがちょうどいいのかもしれない。
「僕、いつの間に涼風さんになったんですか。知らなかったです」
「あー……うん。でも、いずれはそうなるんだよ。ごめん。今度ちゃんといいお店で、指輪も買ってプロポーズする」
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