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4にしおりをはさみました!
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不思議なままでいたほうが、この街の雰囲気にも似合ってるしね、と彼は続けた。でも、その横顔にはありありと、面倒臭いって書いてある。誰とも関わりたくないんだ、この人は。
「じゃあせめて、ヒヤさんが建築家っての、みんなに言ってもいい?」
「絶対、駄目。……君、僕のこと誰かに話したりするの」
「してない。……言っちゃ駄目?」
「駄目。一切言わないで」
心が揺れた。
「親にも?」
「うん……出来れば」
「友達にも?」
「うん」
「ふたりだけの秘密?」
「そうだね」
さらっと流された。俺が右手を伸ばして、小指を立てても、意図が掴めずにいるようだった。
「なあに?」
「約束」
「……………………………………指切りするほど、子供じゃないでしよ」
うろたえて、ヒヤさんはそう言った。僅か指先さえ触れるのをためらう。その理由はよくわからない。子供が好きなら、普通はベタベタしたいもんじゃないの?
「子供だもん」
「……そういうときだけ子供ぶって」
「子供だもん………………………そういうときって、なに?」
「しません」
「なんで」
「しなくても君は……言わない……………と、思う……から……」
語尾はぎこちなく、ぎゅっと肩をすくめて、ヒヤさんはクッションを構える。
「言うかもよ?」
「やめて」
「駄目?」
「絶対」
「んじゃあ、はい」
「しません」
「なんで」
「なんでも」
「なーんーで。たかが指切りじゃん」
「たかがじゃないよ、あれだよ、あの、ほら、約束破ったら指切り落とすんだよ」
「破んなきゃいいじゃん。えっ、なに、ヒヤさん、約束破る前提なの」
「いや、違うけど、違う。今のは、間違えた」
「ねーえー、早くー」
クッションで何故か防御している、彼にこちらが見えないのをいいことに、さっさと近付いた。質の悪いトランポリンみたいに、体が弾む。ふわふわで、バランスを保つのが大変だ。ああこれも、夢を見てる感覚に近いな、と思う。
クッションを強く握りしめている手に触れた。
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