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③にしおりをはさみました!
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③
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鈍い音を上げて、ドアが開かれる。
目に映るのは相変わらずのカラフルな髪色たち。
加藤にぐいぐい引っ張られながら、俺はまだ他事を考えていた。
足が止まる。
そして俺はずっと俯けていた顔を上に上げた。
「けんちゃん先輩みてー」
「なんだ二人揃って。何かあったか」
ボスザルを確認すると同時に声が聞こえる。
そこで漸く、自分が何故ここにいるのかと俺は軽いパニックに陥った。
いつの間に…?
「みてみて、かわいーっしょ」
なんて言いながら加藤が俺の腕をぐいっと引っ張る。
前に引っ張り出された俺は、ボスザルからの視線を真っ向から受ける状態になった。
ん?
なんだ?
「お前がやったのか」
「ういうい。髪型変えるだけでむっちゃんってすんごい雰囲気変わるね」
「だな」
舐めるような視線を向けられて、意味もわからないまま思わず俯く。
なんだ、なんでそんなやらしい目で俺を見るんだ。
恥ずかしいじゃないか、皆がいるのにそんな目で見ないで下さい…。
「じゃ、俺教室戻るー」
「後で送り届ける」
「りょーかーい」
「え、じゃあ俺も…」
「お前はダメだ」
去っていく加藤の後を追おうとすれば、そう言ったボスザルに強く腕を掴まれる。
何が何だかよくわからないと思いながらも、俺の心臓が激しく暴れだした。
なんだ、なんなんだ。
だから何でそんなやらしい目付きなんだよ!!
「あの…」
「こっち」
言いながらボスザルが奥の方へとぐいぐい引っ張る。
「え、え、」
人目から遠ざかろうとしているのがイヤでも分かり、俺の心臓は更にバクバクと加速していった。
しかし遠ざかると言ってもたかがしれている。
一年と二年がごった返してるんだ。
どこへいこうとも軍団の視線に晒されるのはわかりきっていること。
一応距離は取れたけど、会話が盗み聞きされないといった程度だ。
ガシャン、という背後からの音にビクリと肩が波打つ。
気付けばフェンスとボスザルに挟まれていた。
「こうして見ると、お前もイケメンの部類に入るんじゃねぇの」
「はい?」
俺をフェンスに追い込み、右手をその網目に引っ掛けながらボスザルはズイっと俺を覗き込んだ。
いきなりとんでもない台詞を事も無げに言うもんだから、思わず眉を寄せて聞き返した。
俺がイケメンだったら貴方はどうなるんですか。
「そんなんで目の前ちらつかれたら、な」
「………」
うん、ちょっとなんかよくわからないけども。
発情されてたりなんかするわけですか。
「夜まで待てねぇな」
「………」
熱っぽい視線が真上から降りてくる。
その眼差しは、まさに獲物を見つけた雄ライオンそのものだった。
黙っていたら喰われてしまう。
「お、おおおお楽しみは後にとっておくほうがよりいっそう楽しめるかと思いますが!!」
「俺的にはマジでかなり待った方だと思ってんだけど」
段々近付いてくる整い過ぎたそのお顔。
俺の視界にふっと影が宿った。
「ああああの見られてますから!!」
そうだ、少し離れた場所には軍団が所狭しとワイワイやっていてだな。
っていうかもうなんか皆こっちチラ見してますよね!?
ガン見してるヤツもいますけど!!
「キスぐれーいいだろ。減るもんじゃねぇし」
「そういう問題ではないかと!!」
「だったら見てた奴等から後で金徴収しとく」
「そういう問題でもないかと!!」
「めんどくせぇな…」
ボスザルの左手が俺の顎を捉える。
顔が僅かに上を向いたと思ったら、いきなりの深さでキスをされた。
反射的にぎゅっと目を閉じ、片方の手でそのシャツをきゅっと握り締める。
「ん…、」
人目が、なんて気にしてたけど、ていうかホントに死にたいくらい恥ずかしいんだけど。
それよりも口の中を蹂躙する熱い舌が、俺から思考能力等その他諸々を綺麗さっぱり奪い去っていった。
「は、ん…、」
離されたと思ったらまたすぐ口を塞がれて、口内を犯される。
ああもうだめだ。
違う違う、ああもうだめだとか言ってる場合じゃないから。
いやいやいやいや。
「い、やだ…ッ、んんッ」
言葉を紡ぐ事ができない。
何とか口を離して言葉を発しようとしてもすぐにまた塞がれる。
しかしこのままではもう本当に切腹を余儀なくされてしまう。
焦った俺は閉じていた目をゆっくり開き、視線が重なった時を見計らって心の底から目で訴えてみた。
しばらく見詰め合ったままキスをすること約数秒。
見詰め合ったままのキスというものに焦りながらも興奮してしまう俺。
結果。
「なんだよ…」
やっと離された唇。
視界は溜まった涙でぼやけている。
ボスザルの顔がぐにゃぐにゃに歪んでいた。
「遅いです…ッ」
「遅い?」
下を向いたら涙が零れそうだったから、上を向いたままで俺は訴えた。
心の叫びです。
「き、キスしたら、こっ、こうなるって…ッ」
いい加減こちらの都合を理解して下さい。
そりゃボスザルはキス如きでいちいち反応したりしないかも知れないけどさ、俺はさ…。
「こう?」
意地悪なのか本当にわかっていないのか見極められなかった俺は、ボスザルの言葉からフイっと顔を横に逸らせた。
「お、俺はッ、き、キスだけでこうなっちゃうんです!」
わからないように腰を軽く引く。
しょうがないじゃないか。
だってボスザルってキス上手だし、しょうがないじゃないか。
俺をしげしげと見詰めていたボスザルも察したのか、しばらく沈黙したあと、
「ハル!」
手をひらひらと振りながら、そう声を張り上げた。
瞬間。
「え、え?」
あっという間に俺達二人だけになる。
えぇ──…
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