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第11章ー6 見えない枷にしおりをはさみました!
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第11章ー6 見えない枷
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「そんな素晴らしい男ではない。ダメダメだ」
「それは、今回の一件で理解しました」
「だったら」
「ですが、それでもなお」
田口は、続ける。
「おれのあなたへの評価は変わりません」
「田口」
「むしろ、人間らしい一面を見ましたし、やっぱりあなたにも助けが必要なのだという事が分かりました」
「それは……」
包丁を握る手が緩む。
それを見て、保住の手を取ってキッチンから連れ出す。
そして、リビングのソファに座らせた。
自分は、彼の目の前に膝ま付き、俯き加減な彼を下から見上げる。
「澤井局長に聞きました。昨晩の顛末は」
「な、何でお前に……?」
「あの人の考えていることは分かりません。だけど、それを聞いて腹立たしく思いました」
「すまない。不愉快な思いを……」
「そうではありません。全く当てにならなかった自分にです。それから、あなたを傷つけた局長もです」
「傷付けたとは語弊がある。昨晩のことは承知の上でだな、」
「それでもあなたは傷付いているじゃないですか。浮かない顔をしていますよ」
田口は、痛いところばかり突いてくる。
「お父様の事と関係があるのではないですか?あなたは、お父様の影を背負いすぎていると思います。多分、周りがそうしているのでしょうけど、あなたは、あなたではないですか。澤井局長のこと、本気なのでしょうか?」
違う。
保住は、首を横に降る。
「違う、おれは……」
代わりではない。
いや、代わりだった。
「なにもあなたが、お父様が残した事の後始末をする必要はないのです」
「そんなつもりは、ない……」
「つもりがなくても、おれにはそうとしか思えません」
「田口……」
保住の瞳は、光がない。
ぼんやりとしていて、思考があちらこちらに行っている。
「保住さん、もうやめましょうよ。自分の人生を歩まないと」
自分の人生とは?
なんだ。
何も考えてこなかった。
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