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第14章ー1 日常なはず。でも、非日常にしおりをはさみました!
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第14章ー1 日常なはず。でも、非日常
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「おはようございます」
翌日。
田口は、久しぶりの職場に顔を出す。
保住と喧嘩別れをしてしまったおかげで、どうしたものかと悩みもあるが、やっぱり久しぶりの職場は嬉しい。
「お疲れ」
「頑張ったな」
谷口や矢部は、嬉しそうに迎え入れてくれた。
「二週間、掃除や洗濯ばっかり。主婦の気持ちがわかりました」
「そうかそうか」
きょろっと視線を巡らせると、保住はまだ来ていない。
珍しい。
早く出てくることが多いのだが。
「あ、係長?」
「はい」
渡辺が苦笑いする。
「お前いないし。一人で仕事背負い込んで疲労困憊だ」
「そんな。おれなんかいなくても、係長は、一人でもへっちゃらなんじゃ」
「そうでもないんじゃない?最近は、お前に頼んでいる部分も多いし」
「役に立ってたんだな。田口は」
「そ、そうですか?嬉しいです!」
二週間いなくても平気、なんて言われたほうが、ちょっとへこむ。
必要とされるということは、嬉しいことだ。
「昨日も残業しないで早く帰ったし。大丈夫かとは思うけど……」
そんな話をしていると、保住が顔を出した。
「おはようございます」
「おはようございます」
田口は頭を下げた。
避けられるだろうか?
そう思うが、彼は田口の前に来た。
「二週間大変だったな。楽曲の仕上がりまで持って行ってくれてありがとう」
「いえ、あの、仕事ですから」
「しばらく間が空いてロスがあるが、谷口さんがフォローしてくれていた。よく聞いておけ」
「はい」
保住は、それだけ言うと自席に戻った。
あれ?
変なの。
田口は、目を瞬かせる。
「田口、戻ってきて良かったですね!残業からも解放されます」
渡辺の言葉に、保住は「そうですね」とだけ答えた。
「係長に褒められたな!良かったじゃん。頑張った甲斐があるな」
谷口はそう言いながら、田口の仕事の書類を取り上げる。
説明をしてくれるようだが。
田口は腑に落ちない。
怒っている?
全然褒められていない。
保住の笑顔がない。
視線も合わない。
もしかしたら、まだ怒っているのかもしれない。
そう思う。
目の下のクマは相変わらず。
今日は珍しくネクタイがきちんとおさまっている。
変。
二週間で何かが変わった。
みんなは、気がつかないのだろうが、田口には分かる。
いつもの保住ではない。
谷口の話を聞きながら、田口はそう思った。
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