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84.暗闇1
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華々しいステージ。
スポットライトに照らされて、自分は意気揚々とお辞儀をした。
ショルが憎憎しいほど、爽やかな笑顔を向けてくる。
なんだかイラっとした。
それを我慢して、自分はヴァイオリンを構える。
それを見て、ショルがタクトを振り下ろす。
オーケストラの伴奏が始まる。
いつも通りのことだ。
弓を当て、弾き始めた。
しかし。
何かがおかしい。
妙に楽器が重く感じられた。
その違和感は曲が進むにつれて増す。
重いかな?
そんな程度ならまだましだ。
それどころではない。
ずっしり。
次第に石のように重くなる。
左手で支えきれない。
バランスを崩し、床に膝を着いた。
それでも、なお重さは増す。
ずっしり。
ずっしり……。
なんだ?
これは?
自分が大変な目に遭っているのに。
ショルは笑っている。
なにがおかしいんだよ?
客は?
客も笑っている。
みんなの笑いものか?
おれは……。
あまりの重さに楽器を手放そうとするが、離れない。
そのまま、ステージの床も突き破って、真っ暗な闇の中に落ち込んだ。
助けて!
このままでは。
おれは……!
焦った瞬間。
白い手が頭上から伸びてきた。
その手は、闇に落ち込もうとする圭を救ってくれるようにそっと差し伸べられていた。
藁にもすがる思いで、その手に掴まろうとしてもがいた。
しかし、手が思うように動かず、その手を掴み損ねた。
だめだ。
自分は……。
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