アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
36にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
36
-
「荷物だよ、荷物。持ってやる。」
「ああ…。うん。ありがとう。」
意識があるのかないのか。朧気に答えると、相手は嶋に手提げ鞄を預ける。思ったよりずっしりと重い鞄に嶋は面食らう。
「え…っ??おっも‼これ、何入ってんの??」
「筆箱と筆記用具と参考書、あと問題集八冊。」
「は…ッ‼?」
(一冊で十分では‼?)
目を丸くする嶋の隣を、相手はとぼとぼと歩く。…心なしか、窶れて見えた。嶋は、顔を上げつつ、相手に訊ねる。
「…こんな重いの、よく持ち運びしてんなぁ~。」
「僕だって男の子だし。…それくらい、持てるよ。」
声音が幾分か和らいでいた。否、覇気がないだけかもしれない。
(大丈夫か…??)
無駄かな、と思いつつ、嶋は同居人に左手を差し出す。
(紫の利き手は、右で間違いなかったはずだ。)
「…手ェ、繋いで帰るぞ。お前、ふらっふらじゃねぇか。」
「えッ‼?」
心臓が口から出るのか、というくらい吃驚していた紫だったが、ややあって我に返る。
「…いっ、いいよ。恥ずかしいし…。」
「はァ~っ‼?せっかくオレが…。」
「それにッ‼」
紫の柄でもない大声が、二人の間に流れる空気を震わせた。
「…それに僕の右手、横っちょが今、シャーペンの芯で真っ黒に汚れていて…。触ったら、嶋の手も汚れちゃうから。」
目元に影がさすほど深く俯く紫に、同居人は迷いなく手を伸ばす。
「し、しま…っ」
焦った声をあげる相手に、嶋はぶっきらぼうに答える。
「…っつか、こんなん汚れじゃねぇじゃん。お前が頑張った証だろ。恥じんな、誇れよ。」
荒っぽく繋いだ紫の手は、嘘みたいに温かくて…握り返されている手ごたえがほとんどなかった。
「紫ちゃん、もっと強く握ってくんねぇ~と。オレら、離れちゃうぜ。」
「ごめん…。」
項垂れる頑張り屋の姿が、嶋の目に痛い。
(握力ほとんど残らねぇほど、強い力でずっとシャーペン握ってんじゃねぇよ。)
「紫ちゃん、何でここまで一生懸命やるんだよ。」
_
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
36 / 146