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第1章 かなしい蝶と煌炎の獅子 〜不幸体質少年が史上最高の王に守られる話〜
煌炎14
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それでも、聡明な金の王ならば、真っ先に貿易祭の保護に打って出る。それを知ってか、敵は貿易祭の場に集まる兵を限りなく抑えるために、このような時間差の攻撃を仕掛けたのだろう。それに加え、何の前触れもない突然の襲撃だ。さすがにこれは、若き国王の手に余る。
ふ、と息を吐いた男が、もう一度辺りを見回す。
会場の出入り口は一カ所ではない。人々は皆、思い思いの出口を目指し、中央の噴水から見て放射状に散り散りになっているようだった。そして、噴水の直下には、青白く光る巨大な魔導陣がある。魔物たちは、どうやら多くがそこから湧き出しているようだった。先程男が確認したような、魔物一体分くらいの小さな魔導陣は、人々が逃げるだろう先にいくつか設置されているのだろう。だが、いくら小さな魔導陣を壊したところで、中央のあれをどうにかしなければ、焼け石に水だ。そして、現状の兵力では人々を逃がすことで手一杯で、大元の魔導陣までは手が回らない、といったところか。
人の少ない場所を選んで地面に跳び下りた男は、先程の魔物が出てきた魔導陣を剣で一閃した。すると、じわりと陣が滲み、融けるようにして消え去っていく。
それを確認してから、彼は中心部を目指して駆け出した。先程魔物を倒して道を作ったせいか、さすがにこのルート上に残る人は少ない。他の場所はまだだろうが、この区画に居た人々は大方逃げおおせたのだろう。ならば。
「風霊、屋根の亀裂が気掛かりだ。崩壊と落下に備えて、何かあればすぐに対応しろ」
命に従い風が舞い上がると同時に、今度は一際強い声が空気を震わせる。
「火霊!」
駆ける脚を緩めぬまま呼べば、熱気が男の周囲でゆらりと揺れた。鎮火ならば水霊に任せるのが最良の判断だが、男は水霊との相性が一際悪く、水霊魔法だけは全く扱えない。風で火の拡大を抑え込む方法もあるにはあるが、風霊魔法を得意とする男でも、精々この会場一帯の炎をどうにかするのが限度だろう。
よって、ここで選択できる方法はひとつである。
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