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『共鳴』にしおりをはさみました!
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『共鳴』
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とん、と押され部屋へ押し込まれ
体は床叩きつけられた。
白葉はドアをロックしそんな俺に歩み寄る。
「白葉……なにすんだ」
「言ったやろ?食事の時間や…」
薄暗い部屋で白葉の表情は読み取れない。
「……食事って………」
「いつぶりやろ。」
伸ばした手は、俺の首筋を辿る。
予想しなかった冷たい手に
体が強ばる。
今まで気づかなかったけど
近くにきて気づいた。微かに香る香水の……
「俺は、式に話がある。」
「…」
暗闇に慣れた瞳に写ったのは
切なそうな白葉の表情だった。
「白葉、……」
「もう、黙っとき」
距離ゼロになったその瞬間に
俺の両眼はその冷たい大きな手に覆われ
首筋に牙が突きつけられたのがわかった。
ずくりずくりと吸われるその感覚はいつもの白葉とは違って。
壊れ物に触れるように静かに
優しい吸血だった。
そういえば
前までは白葉の吸血回数はすごく多かったのに……
ほんとに、いつぶりだろう。
いやな女性の香りがする中
俺の意識は暗闇へと落とされたのだった……
――――――――――――――――――
カチャリ……
部屋を出たその先には式が立っていた。
「……雨…」
「眠っとるで。」
わしわしと白髪をかきながら目線は合わせない。
「……」
「喋るつもりやったろ。」
今度は式が視線をずらす。
そんな彼をまっすぐに、
白葉は瞳に捉えた。
「ソレを知れば雨は壊れる。傷つく。」
「知ってる。だけどいつかは……」
「記憶は戻らん。戻ろうとしてもまた緋色が消す。その繰り返しや……」
「雨は知ることを望んでる。」
「なら言ってやるんか。『オレらは仇同士なんだ』……てな。」
「………っ」
あのとき
あの日最初に出会ったのは
緋色ではなく
式だった……
自分の仲間の屍の山に佇み
自分の父のものであるその生首を持ち
血に塗れた少年に出会ったのは…
「お前は俺が 狩る」
そして
キミを殺めようと
触れた瞬間に
キミの全てが流れ込んできた……
「あ……き、みは………」
数十年前――
『人間と逃走しただと?!そんな馬鹿な…!!!上級にあろうものがそんな失態あってはならぬ!すぐに二人とも捉えて処分せよ!!』
あの時はただただ父の発した命令に従うだけだった。
標的はすぐに見つかった。
強く降りしきる雨の中
必死に女を隠している男。
こいつが 父の言ってた馬鹿な男か。
『殺すなら、俺だけにしてくれないか。』
またそんな馬鹿なことを……
『下った命令は、二人とも処分だ…』
逃げ回って逃げ回って
最早抵抗する力も残っていないのだろう。
『……雨…もう一度お前を…』
迷いはなかった。一突きでころしてやった。
良く見れば、二人とも傷だらけだった。
逃げていた時の傷らしい。
「最初に大切なものを奪ったのは……オレだ。
雨の両親は、オレが……」
『式、だっけ。俺雨。雨ってかいてレイン。』
『えっお前も親いねーの?俺も……いないんだよね。いるかもしれないけど会ったことない。』
『俺たちってどうやって出会ったんだっけ。俺、いろいろ記憶飛んでてさ……』
『そっか、おまえも記憶ないんだ。同じだな。なんかお前とは
仲良くなれそうな気がする』
ちがう
ちがう
おれは ただ隠してるだけだ。
キミに嫌われたくないから。
だからおれは今日も
『うん……おんなじだ……』
きみにうそをつく。
あの日
雨は
上級吸血鬼を滅ぼそうとしていたのだろう。
奪われたものの復讐として。
正気を失ってまで一心不乱に……
「もう、おれは雨に嘘をつきたくない……」
―――共鳴
触れたものの感情や記憶全てが
流れ込んでくる。
オレの 能力。
あの日触れたあの男からは
綺麗な女の人と
その胸に大切そうに抱かれた赤子が見えた。
―――雨と呼ばれるその赤子が。
「俺があの人を殺さなければ
雨は、幸せに時を過ごせていたんだ―……」
あのひ
キミを殺めようと手にかけた
あの日流れ込んできたキミの記憶は
寂しそうに玄関にすわり
ただひたすら父さん、母さん、と両親を待ち続ける小さな背中だった。
あの玄関の扉をあけ
帰ってくるべき人物を
自分は奪ったんだ。
嫌われたくない
そばにいたい
話したら 絶対に
今までの関係には戻れない
でも もう ウソは
つきたくない。
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