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有川先生⑤にしおりをはさみました!
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有川先生⑤
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俺は時間を忘れて日記を読み進めた。
中学二年生の夏に緑という人物が入院したという内容になると、日記の頻度が上がった。日記の一ページ目に挟まれていた写真に写っていた人物だろう。
『まさか緑がガンだなんて……。ステージ4、助かる見込みはない。
たまたま緑の母親が親戚に話しているのを聞いてしまったけど、永瀬に言うつもりは無い。
アイツに隠し事をするなんて芸当出来ないし、ちょっとネジ外れてるところあるから、なんで言っちゃいけないの? って言いそう』
『やっぱり永瀬は緑の病状を知っていたらしい。緑にあっさりとガンでステージ4で余命三ヶ月だってバラした。緑は俺らの前じゃ笑ってたけど、後で泣いてるのを見た。
俺と永瀬が緑を思う気持ちに上も下もない。言う事が正しいか間違っているかなんて、俺には判断がつかない。
でも、お陰で緑はやりたい事を積極的に言うようになった。毎日を無駄にしたくないっていつも笑顔だった』
『緑が亡くなった』
『永瀬が学校に来なくなった。様子を見に行ったら、顔を真っ赤にして泣いていた。何日も何日も涙が止まらないんだって。
だから言ってやった。俺が緑の代わりになるって。そしたら永瀬に殴られた。
あいつ、イジメられてる時はいつもやられっぱなしの癖して、こんなに腕力強いならやり返せよな』
『永瀬が登校してきたのは良いけど、俺を愛人にすると言い出した。
彼氏は緑以外に有り得ないんだと。本当は緑を俺に取られるんじゃないかって、必死だったんだと。
良いよ、俺も緑がいない世界は寂し過ぎる。永瀬の事は嫌いだったけど、愛する人を失った二人なら支え合えるような気がした』
『永瀬の奴、ドSだった。俺ってMだったのか……?
知らない世界に連れていかれた気分だ。永瀬に惹かれている自分に嫌気がさす』
『お互いの呼び方を下の名前で呼ぶ事になった。
莉紅。莉紅。言いにくい。でも、綺麗な名前だと思った』
「勝手に日記読まないでくれますか?」
ドクンッ!! 急な声に胸が飛び跳ねた。
小倉がドアを開けていた。身体を洗ったようだ、さっきまでの精液塗れではなく、綺麗な全裸姿で俺を睨んでいる。
ドアを閉めると鍵をかけて、俺に近寄る。開いているページを見て、俺がどこまで読んだかを確認したようだ。
「大方、莉紅の弱味でも握ろうとしたんじゃないですか? 莉紅の部屋は隣です」
「一緒に住んでいるのか?」
「莉紅のご両親が海外で、今は莉紅と俺の二人暮らしです」
「え? 小倉君のご両親は?」
「……言いたくないです」
小倉は苦虫を噛み潰したような顔をした。両親との関係が良好な子供のばかりではない、もしかしたら小倉も家庭内に何か問題があるのかもしれない。
「悪かった」
何か事情があるんだろう。高校生が二人暮らしだなんて、心配だが世の中には一人暮らしをしている高校生もいる。
これ以上は口に出さない事にした。
「さっきの乱交を写真で撮れば充分弱味になったと思いますけど」
「撮れるわけないだろう。撮ったところで脅しには使えない。それに俺は、永瀬君がいじめに巻き込まれていると思ったから助けたいと思ったわけで……」
「優しいですね。俺、有川先生の事良い先生だって思いますよ。だから、俺達の事に何も触れずに知らないフリをしてもらえませんか?
この日記、この後莉紅が辛い思いをする内容も書いてあるんです」
「辛い……?」
大事な人の死という経験だけでも辛く苦しいものだ。これ以上何が……?
「そうです。それに、もう学校でいじめるフリをする必要がなくなりました。性行為も……人目がつく所ではしませんよ。
見なかった事にしてもらえますか?」
「……教師として見過ごす事は出来ない。けど、非難するつもりはない。
困った事や悩みがあれば相談してくれ。俺は生徒の味方でありたい」
本音はそれだった。
いじめはなかった、だからといって何も問題がないわけではない。永瀬を中心に、彼に惹かれている者達が愛人という体で支え合っている。
乱交は手放しで頷けるものではないが。
せめて、彼らが困った時に味方でいてやりたい。
「ありがとうございます。じゃあ、何かあれば有川先生に相談する事にしますね。
早速相談に乗ってもらってもいいですか?」
「なんだい?」
「今先生がここにいるの知ってて、莉紅に帰ったって言ってるんです。いわゆる、匿っている状態なんですけど……家からどうやって先生を帰そうか……」
よく見ると、小倉君はダラダラと冷や汗を流している。顔も心なしか青ざめている。
「バレずに脱出しないと。先生だけじゃなく俺も酷い目に遭う」
「じゃ、先生が出ていって、永瀬君に一言言ってから帰るよ」
「なっ! そんな事したら、またエロい目に遭いますよ」
「エロい目に……?」
「俺もお仕置きされるかもしれない。絶対にバレないようにしないといけないので、ここに隠れてて下さい。ちょっと様子見てきます」
小倉は思ってたより優しい子なんだな。
緊張の面持ちで部屋から出ていってしまった。
日記を読み進めたい気持ちもあったが、それはやめた。本当は見られたくなかったに違いない。
少しでも彼らの事を知れたのは良かった、これくらいにしておこう。
「先生、こっち!」
戻ってきた小倉君はTシャツと短パンに着替えていた。早くと急かされて、廊下に出た。
誰の喘ぎ声も聞こえない。しんと静かだ。
廊下を進んで、階段を降りる。玄関には靴が置いてあった。ここで縛られて靴を脱がされたが、綺麗に揃えられている。
「靴置きっぱなしじゃ、俺が帰ってないってバレてるんじゃ?」
「あ、靴はずっと靴箱に入れてたんです。これはさっき出しました」
「あ、ありがとう」
「早く、今なら莉紅が料理中だから!」
「分かった!」
すぐに靴を履いて家を出た。 外はもう薄暗い。生温い風が肌を駆け抜けた。
雨が降るだろうか、そんなじとっとした空気だった。
翌日の朝の事だった。
あまり寝つけず、早く学校に着いてしまった。こんな日は屋上で煙草を吸うに限る。
まだ梅雨は明けない。はやく明けてけれればいいが。
薄暗い雲を眺めていると、ガチャとドアが開いた。
「こんなところに。有川先生おはようございます〜」
爽やかな笑顔で挨拶してきたのは永瀬だ。家と学校でのキャラの使い分けをしているのは分かるが、こうしていると大人しそうな真面目な生徒にしか見えない。
俺は煙草を携帯灰皿に入れた。流石に学生の前で喫煙はしない。
そういえば昨日、俺この子のチンポを舐め……──いや、もう忘れよう。
「先生。今日葵唯お休みします」
「どうしたんだ?」
「ちょっと体調不良で……先生が帰らずに隠れてたのを秘密にされたので、折檻したんですよ。そしたら葵唯熱出しちゃって」
「あんなに君を思っている人に、なんて事を……」
「先生を口実にいじめたら、予想以上に俺も葵唯もヒートアップしちゃっただけです。
先生が口実になるような事するのが悪いです」
そういう問題か?
性に一番興味を示す年頃だろう。大人としての意見は言っておこう。
「そういうのは程々にな。自然な状態で、雰囲気が良い時にするのが良いと思うぞ」
「それは先生の好みでしょ。とにかく、そういう事なので。あ、あと先生……」
永瀬は俺の腕を掴むと強めに引っ張るので、斜め前に俺の身体は傾いた。
むに……と。唇に柔らかいものが触れた。
キス。永瀬にキスをされた。
「ちょ、なっ! 何をするんだ!」
「お仕置きです。葵唯の日記見たんでしょ? 僕には絶対見せないのに」
歯を見せて「いーっだ」と子供のようだ。悔しがっているようにも見えた。
自分の大事な人の秘密を他の人が知っている疎外感は、俺にも経験がある。
「先生。これ以上絡んできたらまたお仕置きしますから。葵唯と夏希と和秋は僕の愛人なんで、取らないで下さいよっ!」
永瀬は顔を真っ赤にして俺に牽制をすると、さっさと屋上から去っていった。どうやら小倉と俺の関係を、よく分からないが深読みしてしまったようだ。
愛人がどうのっていうのは、やはりよく分からないが、その三人と永瀬君は扱いに気を付けなければ。
教師生活三ヶ月目突入。生徒と関わる難しさに直面。こんな教師でいいのか不安ばかりだ。
ぽつ、ぽつ、と雨が降ってきた。両頬を両手で叩いた。教師の顔に戻してから職員室へと戻った。
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