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聖地巡礼(1)にしおりをはさみました!
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聖地巡礼(1)
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「松永ぁああああ!!」
「何っ!?」
衣替えの準備をしていた松永の部屋の扉を勢いよく開けて入って来た俺に松永は驚いていた。
「あれはどういうことだぁ!!」
「なんが?」
「お前の新しい話だぁああああ!!」
松永が新しい物語を書き出した。
俺はみんなよりも早く下書き読んでたからこの話はちょい前の話なんやけど松永が公開するまで待ってたんよね。
「お前ぇえええ!!仕事でいろんな男に会って仲良くなってんじゃねーのー!?」
「はい?」
グリモワールでもそうだったし鶴松の文でもそうだったが想像で書くのが苦手なのか調べたり舞台の現地に行って見たり聞いたりしてから松永は書いていた。
今回は現代で働く男がテーマということらしいがなんで人付き合い苦手な松永が!!テレビを見ない松永が!!こんなこと知ってる!?それに松永も出て来てるぅ~!?
これリアルの話じゃねーのか?
俺の知らないところで交流あるやつらがいるんやないんかい!?とね。
嫉妬やね。
「なんで怒ってるのか分からん。僕だって仕事で人と会うよ。営業の仕事してる長野なら分かるやろ?長野程じゃないけど僕だって仕事して人と関わってるんだよ」
「でもお前俺にそんな話してないやん!!」
「は?長野はその日会ったクライアントの話とかいちいち僕にするの?」
「なんであんなに他の仕事のこと書いてるん!?それって俺のいないところで仲良くしてるんやないん?そんな話する位に俺のいないとこで仲良くしてるんやないん?」
「仲良く?その長野の言う仲良くが分からないけど。めんどくさい。衣替え後ででいいや。出かけるよ、準備して」
松永が呆れたような顔をして俺に出かける準備をしろと言った。
「なんで!?」
「いいから早くして。この時間だと売りきれるかもしれない」
「うぉ?」
松永の有無を言わせない表情に「なんって.....俺の質問に全然答えてないやん」とぶつくさ文句言いながら出かける準備をした。
土曜日。
松永の運転で都内某所に行く。
「ここ。あの人」
○○商店という名前の八百屋に連れて行かれる。
「へ?」
「田中商店の田中さん」
松永が店にスタスタ歩いて行くと中で働いていた男が飛び出して来る。
「いらっしゃい!!今日野菜そんなにないよ!!」
「そうなんですか、残念」
松永が話をしている。
俺も近づいて松永の隣に立つ。
「あれ?友達?」
「そうです、友達と近くに来たんで野菜買いに寄りました」
こいつが田中のモデルかぁ。
俺たちより若い。野菜も安い。男は俺に「ども」と会釈したが全体の雰囲気でゲイの俺は分かった。
こいつはノンケやな、と。
松永とエッチしたいとかはないやろう。
親しげではあるけど。それ位なら別に.......いやそれでもちょっと嫌かもしれんwwww
鎌やんとか吉野と仲良いのはよく見るけど知らない男と仲良くされるのを見ると複雑やな。
だが松永を見るその目には恋愛感情がない。
松永もそいつよりも野菜の方が気になるのか野菜を見て手に取ってカゴに「早く買わないと!!」と安さに喜ぶように入れて行く。
俺を安心させる為に連れて来て実物を見せたんやろう。
レジのところからおばさんが手を松永に振って頭を下げた。
松永も頭を軽く下げる。
「これいくらですか?」
と控えめに松永がつぶやいたのをその田中親子のモデルの二人は大声で
「100円!!」
と怒鳴った。
松永がビクッ!!としたのと周囲のお客がそんな松永を見て笑っていた。
シイタケ1パック100円か。
そりゃ松永喜んで通いたいわな。
下町の八百屋って感じの店で松永の文章のような出会いやったんやろう。
名前は変えてるけどね。その名前で気付いていたことが俺にはあった。
帰りの車で俺は松永に向かって言う。
「おい。お前また田中さんの名前出してんぞ」
「え?」
「大学ん時の畑貸してくれた田中さんの名字と同じやん」
「あ!!」
「気付いてなかったん?」
「どうしても野菜とか畑ってイメージすると田中さんになる.......最悪だ」
松永とかモリクミとかがいた園芸部に土地を無償で貸していた人が田中さんで(二人の夜とかキマイラに出てたから読んでる人は知ってるかな)大学辺りのある土地の大地主なんよね。その田中さんに一番初めの園芸部部長だった津島のおっさんが直談判して畑ゲットしたらしいんやけど、それからずーっと園芸部で不法占拠していた畑が田中さんの好意で無料で貸りてたものなんよ。
園芸部が真面目に畑仕事しないでコスプレとかばかりしてたからエライ迷惑かけてたと思う。
実際隣の田中さんとこの畑に園芸部の畑の雑草が浸食してたりしたからなぁ。
「やっぱそうか」
「うん.......」
ありきたりな名前だから言っても問題ないやろ?園芸部に土地を貸していた田中さんは実名で出している。
あの人だけは実名だった。
松永が下書きの段階でどうしても名前を「田中さん」と実名で書いてしまうのを「もう田中さんそのままでいいやん」で田中さんにしたんよ。
いまさらやけど俺たちも松永、長野っていうの本名やないけんね。身バレは勘弁。
そして二人で呼び合う時は「長野ぉおおお!!」「松永ぁああああ!!」やないけんね。
下の名前とかで呼び合う。
「うーん、まだお昼だけどお酒飲みたい?」
「うぉ?」
「お昼からお酒飲めておいしい料理出るお店行く?あー、でも今日土曜だよね....お客さん多いかなぁ」
車を停めて松永が携帯でどこかに電話した。
「席確保してくれるって。お酒飲みたい?僕運転するからいいよ」
「うぉおおおお!!昼間からいいのかぁあああ!!」
「いいよ。あんま酔う程飲まんでよ?」
松永に連れられて都内某所のオシャレなカフェバーみたいなところに連れていかれる。
一つのビルの中にいくつか店が入っているがどれも系列店らしい。
そのビルのオーナーが飲食店のオーナーをしているそうだ。
「いらっしゃい」
カウンター席の中からイケメンが笑顔で声をかける。
うぉ!!むっちゃイケメン。しかも無駄に爽やか。
俺みたいな「エセ爽やか」の匂いがする。
タダ者ではないな........俺と同じ匂いがする。
「こんにちは。急にすいません」
「ここ。この席にどうぞ。カウンターで悪いんだけど話したいから」
と松永に慣れたようにウィンクする。
俺はイラッとするが松永はそれ見てねーwwwwざまぁwww
こいつも俺と同じで自分の魅力気が付いている側のやつやなぁ。
だがその攻撃は松永には一切通じない。
ウィンクされてるのに全く無視して
「はい」
と答えて席に何もなかったように松永は座る。
「友達連れて来てくれたのかな?」
「そういうところです」
「そう言えば三階にモリクミさんいるよ」
「え?」
「うぉ?」
「休みでご飯食べに来てるよ。週末は来ることなかったけど平日の夜たまに現れてたね」
「あぁ.......なんであいつが」
「このお店オーナーの意向でイケメンばかりで店員さん雇ってるんだよね。モデルの人とか。モリクミ先輩イケメン好きやん?だから紹介したんだけど通ってるんだ......」
確かに満席の店の中を見ると店員はイケメンだらけ。店のお客は女だらけだった。
「今日は何を食べる?」
「パスタにしようかと。お勧めあります?」
「今日はリングイネがお勧めだね。トマトソースでエビと貝の魚介を使ったやつだよ」
「じゃあそれで」
そのイケメンに聞かれて松永がオーダーする。
「こっちはお酒飲むんですけど、長野は何食べたい?お酒何にする?」
「肉が食べたいなぁ。酒何にするかなぁ」
メニューを見ながら悩んでいるとその男が
「ちょっと待ってて」
とインカムで何かしゃべっている。
「フォアグラのハンバーグがまだ残ってるからそれにするといいよ。限定メニューでもう終わってるんだけど出してもらうように厨房には言ってる」
「うぉ?高そう!!」
「大丈夫、ランチタイムは1500円だから」
「僕のおごりだから食べて飲んでいいよ。僕も飲む」
「車の運転あるやろ!?」
「ノンアルコールのカクテルだよ。えーとシャーリー・テンプルかフロリダで」
「いつも同じようなカクテルで飽きてない?何か創作で作ろうか?」
「お願いします」
松永慣れてる。
結構来てるんだろうか。
男も笑顔で対応しているが俺の嗅覚がささやく。
こいつもノンケか。
これだけ男前で店員揃えてるからオーナーはゲイかもしれないがこの目の前の男はノンケやな。親し気に松永に話しかけているけれど。
他の店員はゲイが混ざってるなぁ。
むっちゃ俺たちを湿った視線でガン見している店員が数名いる。
そうしている内にモリクミが三階へと続く階段から騒々しく降りて来た。
「やーんっ!!松永くーん!!長野くーんっ!!偶然ーっ!!」
「ほんとにですね......昼間から酔ってますね」
モリクミの頬辺りが赤い。
こいつ今日俺たちの家に来るのを拒否ったらイケメンだらけの店で酒かよ.....週末はイケメンに会わないとお前は生きていけない病気かなんかか?
モリクミも合流してちょうどテーブル席が一つ空いたので俺たちはそちらに移れるようにそのバーテンが手配してくれた。
テーブル席に着いた時三階の階段から吉野と鎌やんまで現れた。
「おぃいいい?お前らもおったんかーい!?」
「二階席空いてないから降りてもしょうがないと思ったんだけどー。松永君たちが来てるのは店員さんから聞いてたんだけどねー。モリクミそれ聞いてすぐ降りて行ったんだけど追うのがだるくてー」
「お前らまで降りてくんなよ!!」
「店員さんからテーブル席にモリクミたち移動して席あるからどうぞって言われてねー」
「松永君、長野デート?」
「まぁそんなところです」
一気に騒々しくなる。
吉野がニヤニヤしている。
イケメンだらけでじーっと店員をガン見していた。
こいつら結構この店来ているのか?
モリクミも馴れ馴れしく店員をいじっている。
「やーんっ!!松永くーんっ!!ムール貝おいしかったよーっ!!ニンニクとオリーブオイルで焼いたフランスパンと一緒に食べるのお勧め!!」
「そうですか。じゃあそれも、あとサラダ何がいいですか?お任せします」
テーブル席に来ていたさっきのバーテンに松永が頼む。
バーテンはインカムで厨房に伝えているみたいだ。
その男は酒を作るオーダーが入った時だけカウンターに戻ったがそれ以外の時は俺たちのところばかりに来て話をした。
そういう営業スタイルなんだろう。
注文はインカムで厨房に伝えているし他の店員も片付け以外の時は客の間を歩きながら会話して笑顔を振りまいている。女たちの目がハートだな。
外人の店員もいた。
なんだこのホストの店っぽいシャレオツなお店は。
その内オーナーまで現れた。
「こんにちは。お邪魔しています」
「よくいらっしゃいましたねぇ。松永さんが来ていると連絡がありましたので顔を出させてもらいました」
後で話を聞くとこのオーナーのおっさんのことで松永が調査員として担当していたそうだ。随分感謝されていた。
何かしたんだろうか?詳しく話をしたがらなかったが俺の知らないところでまた何か松永したっぽい。
「こちらは?」
オーナーが俺を見て松永に聞く。
「えーと、仲の良いお友達です」
彼氏で旦那だけどな!!
「ここで働きませんか?」
「うぉ?」
「彼は駄目ですよ。僕と同じで社会人です。アルバイトは禁止されています」
「そうですか。残念です」
おぃいいいい?そんな簡単に雇うんかーい!?
「やーんっ!!長野くーんと松永くーんイケメンだから誘われたーんっ!!」
「なん、そんな簡単に雇うんです?」
「ええ。容姿がいいお客様が来たらとりあえず勧誘しています。ここのスタッフは全員そうですよ」
来た客をスカウトして店員にしてるんかーいっ!!
オーナーのお眼鏡に叶ったイケメンの男たちが働いているのか.....
「僕は本業モデルなんだけどモデルの仕事だけじゃ厳しいからね。誘われてここでバイトで働いてますよ。モデルとか役者の卵が多いですね」
とそばで話を聞いていたバーテンがニコニコ笑う。
「お酒は何を飲みますか?」
「オシャレなお店やからなぁ。ビールじゃなくてカクテルでも飲んでみるかな」
「好きなベースのお酒教えてくれたらイメージして作るよ」
「じゃあウォッカベースで」
「分かりました」
バーテンがカウンターに戻ってシェイカーを振っていた。
様になるなぁ。
こいつが藤野のモデルなんだろう。
「ほら、何も心配なんかいらんやろう?」
って言いたげな瞳で俺を見つめながら松永が無言で頷く。
「あたしもお酒飲みたーいっ!!」
「モリクミもう飲んでるじゃん」
「黙れ鎌田!!飲み足りないのよっ!!鎌田あんたがどうせ運転するんだからあたしは飲むわよっ!!おい、ゴキブリ!!てめぇはこの後男漁りに行くんだろっ!?とっととどこかに消えろ!!」
「声でかいですっ!!」
「てんめぇぇええええ!!昼間からテンバなんか行っても人いないに決まってんだろ!!夜行くよ!!」
「知らないわよ!!そんなことっ!!ゴキブリの生態なんか知りたくもないわっ!!マジであんた一回階段から蹴り落としたいわーっ!!ちょっとそこの階段のところ立ってみて?」
「二人共落ち着いてっ!!声がでかいっ!!」
オーナーは訳知りなのか笑っていた。
吉野はゲイってばれてるな。
このオーナーは多分ゲイだろう。
イケメン好きなオーナーだろうが店員たちも訳知りっぽい。オーナーがゲイだって知っているな。
このオーナーゲイは無理やりとかで体を迫るような人間じゃなさそうだ。
枯れている、そんな感じ。
目の保養でイケメンで揃えました、って感覚を覚える。
店員を見る目が孫か美術品を見るような穏やかな目だ。
金あるんだろうなー。
年齢も年齢だしアソコも立たなそうだ。
って俺結構失礼なやつやな。
そのオーナーを中年の男が迎えに来た。
「すいません、私はここで失礼します」
「お忙しい中わざわざすいません」
松永が立ち上がって頭を下げていた。
「ゆっくり食事を楽しんで行かれて下さい」
「ありがとうございます」
そのオーナーが去った後松永がボソっと
「今迎えに来た秘書の人がオーナーの彼氏さん」
と俺にだけ聞こえるようにつぶやいた。
「うぉ!?」
「僕のことも長野のこともばれてないし僕たちがゲイなのは内緒にしてる」
「そうなんか」
「うん。僕も仕事する上でゲイだとばれると面倒そうだから。それにあまり関わりたくない」
そう松永は言うと器用にパスタを巻き取って食べながら
「おいしいです♪」
と戻って来たバーテンに伝えていた。
「もう少し待っててね。今肉焼いてるそうだから」
俺の料理がまだ来ていないのを気にしながらバーテンが言う。
「いやいいっすよ」
「これ食前酒とムール貝。先にどうぞ」
と差し出されたムール貝を食う。
初めて食ったがうまかった。
モリクミが物欲しそうに見ていたので分けてやる。
松永は人の顔見ないし、相手がイケメンだろうがなんだろうが無視したりするからなぁ。
ゲイっぽいところがないからばれてないんだろうな。
ハンバーグの上にフォアグラが重ねられた皿が運ばれてくる。
「う.うめぇ.......」
「でしょ?おいしいよね。家じゃなかなか作れないよねこういうの。たまには外食もいいね」
松永が笑いながら言う。
「そうやな。値段も手頃やしデートにいいな」
「デートでまた来てください」
とバーテンが俺に微笑みかける。
いや、もう今がデートなんだけどね。彼氏横に座ってる座ってる。
ウォッカベースのカクテルもおいしかった。
松永はグレナディンっていう柘榴のジュースをベースにしたノンアルコールの創作カクテルをおいしそうに飲んでいた。
傍目から見たら酒飲んでるように見えるんだがそれジュースなんだよな。
一口飲ませてもらったら甘味と酸味がいい感じの爽やかなジュースだった。
思いがけずいつものメンバーと合流してしまってその店に長居して昼間っからうまい飯と酒を飲んで俺たちは上機嫌だった。
「これソースなんだろう?おいしい」
「聞いてあげるよ」
松永が気にしていたソースにバーテンダーがインカムで厨房にまた聞いていた。
これはさ、俺の経験則なんやけど。
イケメンってさ性格もイケメン多いと思うんよね。
女の場合は知らん。
さりげない気遣い出来るとかさ。
雰囲気補正とか髪型イケメンじゃなくてね。
ほんとに顔のいいイケメンって性格までイケメンって多い気がする。
嫌味のない優しさサラリと出せるっていうか。
バーテンがカウンターに呼ばれる。酒の注文が入ったみたいだ。
「マジイケメン」
「だよなぁ。モリクミの攻撃にもたじろがないのが本物やなぁ。普通の男ならドンびくぞ」
「やーんっ!?長野くーんっ!!どういうことーっ!?」
「モリクミお前イケメンいるところには必ずからんで来ようとするよな」
「やだーん!!イケメンとからみたいからですーっ!!あたしのイケメンマップ完成させたいんですーっ!!」
「なんだそりゃ?」
「モリクミ、スマホにイケメンのいるお店、リストで作ってるんだよー。そこでしかお茶したり食事しないんだよねー」
「マジか。鎌やんも連れ回されてるのか」
「あーん!!このクソっ!!余計なことくっちゃべってんじゃねーぞ!!安心してっ!!最後の砦は松永くーんと長野くーんよーっ!!」
スマホを俺たちに見せる。
俺たちの住む家の住所に星三つがついていた。
お前は星でランク付けしてるんかい。
「おぅ、モリクミ。俺たちに構わんでいいぞ。どこにでも飛び立て。むしろ他のイケメンのとこに飛んでってくれ」
「やーんっ!?」
バーテンがこちらを見て笑っていた。
松永が困ったような顔でペコッとそのバーテンに頭を下げる。
どうやらイケメンやけど松永とどうこうはないな。
そんな距離感は感じられない。
まーた俺の嫉妬かね。
「聖地巡礼やなぁ」
「あーん?何が?」
「いや、こっちの話」
松永の小説の舞台を今聖地巡礼してるんやなぁって思ってね。
松永もその言葉の意味が分からなくて頭ひねってたけど。
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