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5.にしおりをはさみました!
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5.
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久弥を連れ、昔よく来た居酒屋の個室に入る。
「ごめんな。
急だったから、こんな所で…」
そう言ったきり言葉が出ず、注文したビールとつまみを待つ間、沈黙が続いた。
俺から誘ったくせに、目を合わす事もままならない。
何から話そうか必死に考えていると、先に注文の品が届いた。
「…取り敢えず、乾杯するか…?」
「…そうですね」
ジョッキを軽くコツンと当て、緊張を誤魔化す為にグッとビールを流し込む。
「…あー…、元気に…してたか?」
「…はい。
部長は、お忙しいみたいですね…」
「んー、まあ…。今は引き継いだばかりだから…。
…間もなく落ち着くよ…」
当たり障りない会話の後は、また沈黙が流れる。
互いにつまみにも手を付けず、ただ手元に視線を落としている。
深く息をし、ジョッキを空にすると、意を決して久弥に問いかける。
「今は、付き合ってる人は?」
ジョッキを持ったままの手が、震える。
久弥が無言で俯き、首を横に振る。
「そっか…」
“女性と付き合って欲しい”なんて、やはり上辺だけの気持ちで、久弥の返事に心底ほっとして呟く。
「じゃあ……好きな…人は…?」
堪らず問いかけると、久弥が一瞬の間を置き、小さく頷いた。
「………男……?」
また、無言のまま小さく頷く。
愕然とした。
どこかで、久弥は俺以外の男に惚れたりしないと思っていたのかもしれない。
そんなはずは無いのに。
息をするのすら苦しい。
「そうか…」
呟くのが精一杯だった。
それからはお互い、殆ど話せなくて。
ポツリポツリと仕事の話をし、店を後にした。
別れ際に、久弥に問いかけた。
「…また…、誘ってもいいか…?」
「…はい…」
暫く悩んで、久弥が小さな声で答えた。
その日は、謝れないままだった。
謝ることで、久弥から答えを出されるのが怖かった。
結局、俺はまた、逃げたんだ…。
なのに、久弥が男に惚れていると聞き我慢が効かずに、また誘いたいと伝えた。
俺はどこまで自分勝手なのか…。
しかし、久弥が俺以外の男と身体を重ねるなんて、堪えられない。
久弥の中に、俺以外のモノが、入るなんて。
久弥が、俺以外のモノを、受け入れるなんて…。
久弥が、俺以外の下で…。
どの道、男と付き合うのならば、今度こそ俺の手で幸せにしたい。
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