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獣の征服②にしおりをはさみました!
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獣の征服②
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どれくらい気を失っていたのだろうか。目が覚めると見知らぬ部屋のベッドに寝ていた。腕には点滴が付けられ身体は包帯で巻かれていた。目は開くが身体が鉛のように重い。ただ無残に散らされた下肢の痛みがない。
「ぅッ、ぅ・・・・ッ」
宝は涙が溢れる。気まぐれでも自分を救い気まぐれでも自分を側に置いて、ブサイクだとか奴隷だとか散々言いながらもたまに優しく撫でるキルシュにボロボロにされたからだろうか。
「・・・どえす、へんたい、あほ、さいてーのくずやろう」
思いつく悪態をつく。
「もう喋れるんだ」
ギョッとした。突然の声掛けにおそるおそる横を見と、金髪碧眼の美しい天使が居た。いや、本物の天使ではないが見た目が美しすぎて天使にしか見えない。
「あの・・・天使ですか」
「あぁ、僕の美しい容姿は天使にも勝るけど天使ではないね。僕はアヴェル=マリア、君の主治医だ」
「アヴェル・・・先生」
アヴェル=マリアと名乗る20代半ばの金髪碧眼の美形は、宝の主治医だと名乗る。
「ここは天剣の病院内だよ。僕は天剣医療部所属の医者でね、2日前に血まみれで運ばれてきた君の治療を担当したんだ。まったくキルシュ君は無茶をさせる」
「キルシュさん・・・」
「何されたかは予想つくけど、君を抱いて蒼白で駆け込んで来た彼は初めて見たよ。普段は済ました顔で犯罪者とか異界種とかボコボコにしてるのにね」
「・・・」
「それにしても君の回復力は異常だね。傷がほとんど塞がってる。オークション会場で受けた傷も含めてね」
「え、、、」
起き上がれなくて全部は見えないが確かに腕の鬱血のあとも痛みも消えている。
「特異種って聞いてはいるけど人間じゃない何かの血が混ざっているんだろね」
「・・・ッ」
身体がこわばる、あまり詳しく聞いたことはないが宝は人間と何かの混血だと母親から言われた事がある。それが原因で社会に馴染めなかったし、おそらくそれも原因で誘拐されたのだろう。これ以上聞かれたくなくてモゴモゴしていると・・・。
「アヴェル先生!」
慌ただしく病室に他人が入って来る。あの赤毛のイケメン青年だ。
「やぁ、どうしたんだい?僕に会いたくて待ち焦がれ・・・」
「いや、それはないです」
「即答かい」
「それより、この人大丈夫ですか?」
「あぁ回復に向かっているよ」
赤毛のイケメンは宝を心配してくれている。側に座り覗き込む。
「大丈夫ですか?」
「はい、まぁなんとか・・・」
「オレは、日向井(ひむかい)カノ。天剣の警備部警官です。キルシュさんとは、一応同僚です。すいません!あの時引き止めてればこんな事には!」
「あ、いや、俺が・・・悪いし。気にしないでください」
「あいつ今、独房で謹慎中です」
「え・・・」
「天剣のリーダーのエイドさんを怒らせたから当たり前です。本当は懲戒免職処分ものなのに」
エイドとは、自警団天剣を設立し混乱していた東京を統率した事実上の東京の統率者だ。ただあまり表に出てこないのでどんな容姿かは見た事がない。あのキルシュを制裁できるのでそれなりの実力者なのだろうか。
「一応リーダーから伝言を預かって来たんですけど、宝さんは別の居住区に移ってもらってほとぼり冷めるまで天剣でしばらく暮らしてもらいます。親御さんには連絡してあるんで」
「母さんは無事ですか?」
「はい、安心してました」
「よかった」
「キルシュさんとは二度と会わせないそうです」
「・・・・・」
宝は首元の銀の鎖が気になった。使い魔とかいう契約がまだあるからだ。それにキルシュに何か言わないとと心がざわつくのだった。
一方天剣の中央棟の地下深く、特殊独房にぶち込まれたキルシュは鎖で拘束されていた。眼鏡をかけていない顔には痣、身体には鞭のあとなのか擦り傷など体罰の跡が残る。だがそれだけ手酷い事を受けながらもキルシュは薄笑いしている。しばらくするとドアを開けて人が入って来る。
白髪琥珀色の瞳をもつ美少年に見える天剣のリーダー、エイドだ。キルシュの向かいに用意されていた椅子に脚を組んで優雅に座る。手には鞭。今の瞳の色はいつもの琥珀色のままだ。
「やぁキルシュ、調子はどう?」
「・・・ッ、ゴホッ、まぁまぁ、だな」
「3日も体罰受けて余裕だね。ドSの精神はドMの精神、君って変態なのかな」
「変態はどっちだか・・・」
「一般人に手を出して病院送りは流石にマズイよ。世間体も良くない。本来は懲戒免職処分なんだけど君は一応うちの最高戦力だからね、最期まで血反吐吐きながら働いてもらうから」
「生かさず殺さず、やっぱりお前変態だぜ」
ビシッ
「ーーーーグッ!ガハッ!」
突然鈍い音とともにキルシュの腹に鞭が飛んで来る。寸前で腹に力を入れたが間に合わずに胃液を吐いた。打たれた鞭跡は赤く染まる。
「心外だな。僕は、身も心もボロボロだった君を拾ってあげた命の恩人なのに。またあの場所に戻りたいの?」
「ここで飼い殺しにされてるよりはマシだ」
「温かいベッドとご飯があるだけここの方が快適だろ?あの子に手を出したのって、同情でもしたのかな?」
「同情はしてないな、欲情はしたが」
「はぁ・・・とんだ好き者だね。君に好かれたあの子に同情するよ」
「・・・あいつとはもう二度と会わない」
「え、そうなの?もう呼んじゃったけど」
「なに!?」
「だって会わせてくださいって言うから」
二度と会わないと言った矢先にこれだ。やっぱりあいつはバカだ、キルシュはそう心の中で悪態をついた。苦虫を噛み潰していると鞭の柄先で顎を撫でられる。
「あの子が来るまで君が気絶せずに待ってられるか遊んでいようか」
天使の顔で悪魔が囁いた、その瞳は赤く染まっていた。
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