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偽りのキスにしおりをはさみました!
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偽りのキス
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昔のことを振り返っているうちに、あっという間に自宅に着いてしまった。
真琴も特に何も話しかけてこない代わりに、手だけはずっと離さなかった。真琴の家は知らないが、まさか送ってくれたのだろうかと思いながらも、きっと晶也ならばここで礼を言うのはおかしいだろう。
「じゃあまた」
わざと素っ気ない態度を取りながら、家の中に入ろうとした時。
いきなり強い力でぐいと引き寄せられたかと思うと、その腕の中に閉じ込められた。
「た、竹島……?」
驚きながら暴れる鼓動を抑えていると、抱擁が僅かに緩んだが、顎に手を添えられて上向けられて。
「っ、ん……」
拒む間もなく、口付けが降ってきた。それも、触れ合わせるだけの軽いものではなく、啄むように何度も繰り返されたかと思うと、次第に深くなって舌先が潜り込んでくる。
「っんぅ……まっ……」
息継ぎの間になんとか拒もうとするも、力では叶わない。その上、あの真琴とキスをしているという事実が震えるほど嬉しくて、無意識に拒んでいた手がしがみつくようにシャツを掴んでいた。
しばらくキスが続いた後、ようやく解放してくれた真琴が、耳元で囁く。
「悪い。お前と付き合えたのが嬉しくて、つい」
「っ……!」
一瞬かっと顔に熱が集中するが、それが決して自分に向けられた言葉でないことを思い出すと、急激に沈み込んだ。
「どうした?」
顔に出ていたのだろう。真琴が気遣わしげに顔を覗き込んでくるが、首を降って笑みをつくる。
「何でもねぇよ。それより、次はこんな所でするんじゃねえぞ」
「……それは分かったが、お前……」
「じゃあな!」
怪訝そうに何かを言い淀んだ真琴を遮るようにして、そのまま背を向けて家の中に逃げ込む。
もしかして、晶也と違うことを見抜かれたかと思ったからだ。それに、晶也ならばあそこで強引に話を終わらせてしまうことぐらいしそうだ。
家の外で真琴がいなくなる気配を感じながら、玄関でずるずると座り込んで唇に触れる。
初めて好きな人とするキスが、まさかこんなかたちになるとは思わなかった。明日から一体どういう顔をして会えばいいのか、まるで分からない。
きっとキスをしたのが晶也ではないと知られたら、真琴は傷付くだろう。今はまだ、絶対に気付かれてはいけない。
せめて、一週間が過ぎるまでは。
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