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不器用な恋にしおりをはさみました!
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不器用な恋
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体液の染みたシーツは冷たくて、
ベッドから降りた俺達は抱きしめ合ったまま。
「……僕昔からずっと、じゅんさんの事が好きでした。」
俺にもたれ掛かりながら、Ωは言った。
「は?志貴じゃないのか…。」
もしかして恋愛という感情すらも、
俺のあの行為で支配されてしまったんじゃないか。
だとしたらなんと言ってやればいいのか。
何をしたら償えるのか。
どんなに考えてもその答えは出ない。
それどころか、恋人であるはずの志貴に
嫉妬心まで抱きかけている俺は、
どんなにクズだろう。
「志貴さんにしつこく迫れば、じゅんさんは僕を見てくれると思いました。
……志貴さんしか見ていない貴方なら、直接行くよりそっちの方がって…。」
「なっ…。」
「志貴さんをあんな目に遭わせた僕を…っ、なんで優しくするんですか?
今度こそ僕…殺されるんじゃないかって…殺してもらえるんじゃないかって思ったのに…っ。」
Ωの涙は見慣れているはずだった。
そしてそれを汚いものと認識して、
この子を始め、これまで数え切れないほどのΩに酷い言葉をあびせてきた。
だけどこの子のそれは違って見えた。
俺を想って流す涙
限界などとうに超えて人生の終幕を求める涙は
哀しいくらいに輝いていて。
離れたくない。
……そう思った。
「名前…教えて。」
「な…まえ……?なんで今…。」
「いいから。…俺が呼びたいんだ。」
「っ、夏咲です……。」
頬を取って、瞳を交えて
『夏咲』の瞳に移った俺は、自分でも驚く程優しい顔をしている。
「カサキ…か。綺麗な名前だな。
…クラス一緒だったのに、覚えてなくてごめんな。」
夏咲はフルフルと首を振って、笑った。
その笑顔を守りたくて、俺も笑った。
「…志貴さんが運ばれた病院……。
あそこの院長が父なんです。
父からは順調に回復してきていると聞いています。
意識が戻るのも…そう遠くないそうです。」
「そ、か…。安心した。」
窓ひとつ無いこの部屋では、
陽の光なんて少しも見えないお陰で天気が分からない。
それこそスマホを確認しなければ時間すらわからないままで。
”夏咲が居る”以外の情報を全て遮断されたこの部屋で、
俺は再び目を閉じた。
隣に確かに感じる温もりは、俺よりも少し熱い。
だからこの地下室はちょうど良い温度に保たれている。
独りじゃ寒いかもしれないけど、
そこに夏咲という存在が居れば心地良い。
恐怖なんて、どこかへ消えてしまっていた。
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