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水の呪い19にしおりをはさみました!
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水の呪い19
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こうして全ての準備を整えた彼が、弓を限界まで引き絞る。同時に風が吹き、矢に周囲の風霊が集まってきた。
徐々に荒び始める風が、ひと筋伸ばされたレクシリアの髪を躍らせる。だが、その風がグレイの元まで届くことはない。恐らく、効果範囲を限りなく狭めることで、魔力の消費量を極限まで抑えているのだ。
(毎度のことながら、腹が立つくらい精密な魔法だ)
前にグレイ自らが刺青師の少年に教えたように、精霊の力に頼る魔法は、魔術と違って細かな調整ができない。だが、レクシリアはそれをこそ得意としていた。
この男は、細かな出力を得意とする魔術においてすら熟練の魔術師にしかこなせないような緻密さで、魔法を操ってみせるのだ。恐らくレクシリアは、精霊との対話が非常に上手いのだろう。それを証拠に、複雑な魔法を使うときの彼は、今のように精霊と会話を交わしながら魔法を構築することが多い。彼曰く、人間には精霊の言葉が判らないから正確に会話ではないらしいのだが、そんなことはグレイの知ったことではなかった。とにかく、レクシリア・グラ・ロンターという人間は、何故だか知らないが万物に好かれやすい性質なのである。それは精霊たちも例外ではなく、彼らはレクシリアの我儘ならかなり柔軟に対応してくれるらしい。だからこそ、彼は相反し合う四大精霊の魔法を、全て同時に扱ってみせるのだ。
(あのポンコツも反則だけど、この人も大概おかしいんだよな。やっぱムカつく)
グレイがそんなことを思考してる間に風霊魔法を構築しきったらしいレクシリアが、すっと目を細めた。そして、お手本のような美しさで弓を引いていた指先が唐突に離され、風の力を存分に纏った矢が勢いよく解放される。その衝撃で周囲に強い風が吹き荒れ、グレイは目を細めた。
幻惑魔法の効果でレクシリアの放った矢が見えることはなかったが、この時点で既に、人間の目が届く範囲を越えたどこかに飛んでいってしまっているのだろう。
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