アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
14にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
14
-
ぼんやり歩いていると、人とぶつかってしまった。
しかも、自分のカバンを落とし、スマホや財布、鍵が散らばる。
「すみません」
慌てて謝り、荷物を拾った。
その人もしゃがみ、拾ってくれている。
顔を上げると、そこにいたのは椿の彼女だった。
「椿くんの友達だよね」
俺の顔を見るなり、笑顔を向けられる。
「私、椿くんの幼馴染なの。よく一緒にいるのを見かけて……」
同じマンションって言っていたっけ。
気まずい気分で落としたものを拾う。
「はい……」
彼女は俺の荷物を拾うのを手伝ってくれた。
「ごめん。ありがとう」
「あ! お財布、汚れちゃってる!」
見ると、ポイ捨てされたタバコの粉がついていた。
「良かったら、どうぞ」
ウエットティッシュを渡される。
もう一度、お礼を伝えてから、その場を去った。
「いいよいいよ。美奈子ちゃん。重いだろ」
「大丈夫。鈴木さん、この前、ぎっくり腰で寝込んだって言ってたじゃないですか。無理しちゃ駄目ですよ」
「悪いね……」
「これ位、平気です」
振り向くと、今度は住民らしきおじいさんの買い物袋を代わりに持ってあげている。
優しい子だ。笑顔が可愛くて、気遣いができて……
――俺はあんなに良い子の彼氏を寝とったのか。
自分のやっている事が急に恥ずかしくなる。
一回きりのつもりだった。
キスされると嬉しくて……
優しく抱きしめてくれたら、それだけで幸せで……
椿の温かい手を思い出したら、目頭が熱くなってくる。
止まらない涙を拭う。
やめなくちゃ……
これ以上は駄目だ。今なら気付かれていない。まだ間に合う。
「……朝日奈。今日も来るだろ?」
「やめておく。用があるんだ」
次の日、椿の誘いを初めて断った。
――距離を置こう。もう誘われても行かない。
「朝日奈。食堂行こう」
「ごめん。今日は弁当だから教室で食べる」
テストも終わり、日常生活が戻ってくる。お互い部活があるし、時間もない。
「体育のペア、一緒に組まない?」
「青山と約束しているんだ」
なるべく二人きりを避け、近い距離にならないように気を付けた。
トイレに入ろうとしたら、急に手を掴まれた。
驚いて振り向くと――
「椿……」
考える間もなく、個室に連れ込まれた。
ガチャ。鍵までかけられ、状況が把握できず一人でパニックに陥る。
久し振りの椿の温度。クラクラしながら、逃げ道を探す。
「…………避けるなよ」
上から降ってくる、どこか切ない声。
「べ、別に避けてなんか」
慌てて否定しても、椿は俺の手を離さなかった。
近い……!
思いきり突き飛ばし、全力で走った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 18