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9にしおりをはさみました!
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もう連絡する事も無いだろうし、何より腹が立つから消したラインが、今はほんの少しだけ悔やまれた。
学食やフリースペースを回ったところで、ふと思い立って来てみた喫煙スペース
ガラス張りのそのスペースを覗くと、スマホをいじりながらタバコを咥える数人の生徒がいた。
その中に、見知った姿を見つけて、苛立ちの他に、何かざらざらした物を覚えた。
二つあるソファとテーブルのうちの一角に、真木は足を組んで座り、スマホを眺めていた。
ドアを開けて無言でその側に立つと、
俺は無造作にテーブルの上にテキストを放り投げた。
「……、」
一瞬、驚いた様に俺を見上げたその顔を睨んだ。
「お前に渡せって頼まれた。」
「……あぁ、吉野か?……つぅか、急に投げんな。何か言えねぇのかよ。」
それには答えずに、背を向けて喫煙スペースを出ようとした
そこで、唐突に真木が放った言葉に足を止めた。
「…お前さ、金でももらってんの?」
「……は?」
何、
何だって?
「今朝、駅でだらしねぇ顔して男と話してたろ、〝あれ、〟何?」
続けられる言葉は、確かに耳に入っているのに、その意味を理解するまでに妙に時間がかかった。
駅、
今朝ー、?
こいつ、あの時
あの駅にいたのか…?
思わず振り向くと、ニヤニヤしながらタバコを吸う、見知った姿がそこにあった。
口角を釣り上げて、心底面白そうに笑うその顔。
「お前の事だから、金でももらってんのかと思って。」
ソファから立ち上がって俺の目の前に立った真木が、〝なぁ?〟と俺の顔を覗き込む。
「…あ?」
真木が、俺の耳元で内緒話でもする様に言った。
「それとも、また〝オナホ〟にでもなってんのか?」
その単語が聞こえた瞬間、体中の血が頭に登るのが分かった。
気付いたら目の前のTシャツの襟元を掴んでいた。
怒りが振り切れると、人間、言葉よりも手の方が先に出るのかもしれない。
「…あっはは!…図星かよ。」
「……ふ…ざ…けんな…」
胸元を掴まれても何の気にもしない風に、真木は笑って見下ろしていた。
〝お前なんか怖くもなんともねぇよ〟
その目がそう言っていた。
怒りと衝動が強すぎて、
情けないほど声も手も震えた。
「良かったな、また使ってもらえて。」
俺の震える手を払い除けながら、真木はそう言った。
言いながらタバコを揉み消すと、俺が放り投げたテキストを手に、
立ち尽くす俺を横目で見ながら、ガラス張りのスペースを出て行った。
他の生徒がざわついていた気がするし、何かを話しかけられた気もしたけど、
俺の足りない頭は、苛立ちと怒りでいっぱいで、何も耳に入らなかった。
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