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仕事を終えてから待ち合わせした駅の近くに、そのお店はあった。
「ここはめちゃくちゃ美味いから、期待していいですよ。・・・大将!ふたり。」
「いらっしゃい!」
庶民的な居酒屋の のれんを潜ると元気の良い大将と、笑顔が眩しい女将さんが切り盛りしていた。
「最近、あの子見ないね。」
「ああ、本業が忙しいの。杉さんがいないと寂しい?」
常連なのか、女将さんへの随分砕けた口調になった松島さんに、ちょっとだけびっくりした。
「アハハ!そうだね、あの子一生懸命だからさ、見てて気持ちが良いんだよね。」
「ふふ、今度伝えておく。ビールで良いかしら?」
松島さんと女将さんから見られて、おれは頷いた。
「はい。」
「はい、じゃあビールふたつね。今日は鯖(サバ)の良いのが入ったけど。」
「じゃあ、それ。あとすり身揚げとタコわさ。」
「はい、鯖とすり身揚げ、タコわさね。」
ポンポンと小気味良い言葉の応酬に、何だか笑顔がこぼれた。
女将さんが厨房へ消えてから、松島さんが笑った。
「ごめんね。ここ、メニューがめちゃくちゃ多いから、勝手に先に頼んだんだ。料理が出てくるまでに自分が食べたいものを決めて。」
「は、はい。」
渡されたメニューは、確かに分厚かった。
「すごいですね・・・。」
「でしょう?このメニューに仕入れ次第で日替わりのメニューも増えるから、なかなか全部の制覇が出来ないんだよ。」
ふふ。
松島さん、子どもみたいだ。
「すり身揚げが絶品だから、楽しみにしてて。」
「はい!」
どんな感じなんだろう。
山野さんも連れて来たいな。
「はい、ビールとお通しです。」
運ばれてきたビールは、グラスが凍るくらい冷たく冷やしてあって、思わず喉が鳴った。
「お通し、凄い!!」
「豪勢だろ?」
いつの間にか砕けた口調で話しかけられているけれど、全然気にならなかった。
おれはむしろ、昔からのお友だちのような感じがして、肩の力が抜けた。
「久しぶりにカニ食べます!」
お通しには、少量だけど茹でたカニと、クリームチーズ、つぶ貝のお醤油煮が添えられていた。
「じゃあ、乾杯!」
「乾杯!」
松島さんの笑顔を見ながら、冷たいビールをグィッと飲んだ。
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