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「甲斐さん、本当に大丈夫?」
チョコレートと一緒に寺田さんが他の人に聞こえないようにそっと声を掛けてくれた。
「う、うん、大丈夫です。」
本当は大丈夫じゃない。
さっきから、中山課長の目がこっちを見ているのが分かる。
蛇に睨まれた蛙っていうけど、ほんとそれ。
もう怖くて堪んないんだ。
「何か手伝うこと、あったら言ってくださいね。」
頭の中がボヤッとする。
だって、ストーカーがおれの横顔を見ているのが分かるんだもん。
「あ、えっと遠野内科の納品日って連絡きてますか。」
「確かまだ確定してなかったはずですよ。確認してみましょうか?」
まだ仕事を辞めるわけにはいかない。
納品に契約を結んだ営業が立ち合わないなんて失礼だ。
だから、頑張らなくっちゃ。
「すみません、お願いします。」
見積もり持っていった病院様にも、その後のお伺いをしないといけない。
震える指で、提出済みの見積書の確認をした。
きっと相見積(あいみつ)の相手は、あのメーカーだから、資料確認しておかなくちゃ。
「あ、甲斐さん、3番にお電話です。」
寺田さんから声を掛けられた。
「あ、はい。」
白い受話器を握って、赤く点滅する保留を解除した。
「お電話代わりました、甲斐です。」
『遠野内科の松島です。』
おれは、部屋まで送ってもらったお礼を言ってなかったことを思い出して、サッと血の気が引いた。
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