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・・・どうしよう、意味が分かんない。
寺田さんは謎の言葉を残して、おれのアパートに戻って行った。
課長も手を握れて、尻尾をブンブン振っている。
おれは困って山野さんを見つめた。
「信じてくれる?」
「もちろん。」
目に光っていた怒りの粒は、すっかり抜け落ちた。
冷静さを取り戻した様子に、おれは胸を撫で下ろした。
「・・・一瞬でも疑って、ごめん。」
「ううん、なんか変な状況になったね。」
植え込みの花壇に、ふたりで並んで座った。
「ね、・・・どこから話そうか。」
「あれだな、メガネのことだな。」
中島くんのこと。
「中島くんは、単なるお友だちで、趣味仲間。盗撮するようなタイプじゃないから、そこは信じて欲しいんだけど。」
山野さんが首を振った。
「・・・あいつ、ずっと中継してたって言ってたぞ。」
「そこが分かんない。言ってなかったと思うよ。」
山野さんの深く皺の刻まれた眉根を、おれは手を伸ばして撫でた。
「いや、言った。GPSの話のときに、言った。」
「えっと・・・。」
GPSの話。
なんで山野さんがGPSって言ったんだっけ。
うーん、中島くんはゲームの話してて・・・あ。
「アイテム?」
蘇ってきた。
『あぁう!甲斐殿がいない間、ひたすらアイテム集めをしたんでずっ!』
『あ、ありがと。それ持って帰還しようね。』
そう、中島くんがずっとインしないおれを待ってる間、アイテムを拾いまくってたって言ってた。
そして、
『アイテムって何だ?!GPSか!』
『アイテムって銃とライフです。』
銃や弾丸、手榴弾などの攻撃物や、敵に襲われた際に回復できるライフを集めてた。
そして、山野さんがおかしくなった。
たぶん、たぶんだけど、このタイミングで、
『ずっとライブ?!』
そうだ、ここで聞き間違えたんだ!
「あのね、山野さんって戦闘系のゲームしたことありますか?」
「いや、うちは厳しくてゲームは与えてもらえなかったから、一回も無いよ。」
なるほど。
「ゲームセンターも?」
「ぬいぐるみを取るやつなら、ある。」
納得した。
なら、ゲームの話は全く分からないはず。
「えっとですね、おれと中島くんがやってるゲームは、」
兵隊さんになって、敵に支配された島を攻略して、取り戻すゲームだ。
各ブロックを制圧していくと、味方の基地が増えていく。
ちょうど第二ブロックを制圧したところで、敵兵なく第二基地に戻れるタイミングで止まっていた。
おれが寝落ちしたからだ。
「たぶん、インしないおれを待つ間に、ブロック中のアイテムを拾って、基礎強化をしていたんだと思うんです。」
山野さんの目が、不思議そうに揺れた。
「ゲームで基礎強化?」
「はい、アイテムには武器やライフと言って、敵からやられた時に回復できる魔法みたいなものがあるんです。」
「・・・へぇ。」
だから、
「中島くんは、山野さんから拾い集めたアイテムを聞かれたから、こう答えたんです。」
すぅっと息を吸った。
「銃とライフだって。」
山野さんは、ぽかんとした顔をした。
「え。」
「銃とライフを、ずっとライブと聞き間違えたんです。」
「ええーーーーー?!」
山野さんが植え込みに落ちそうになった。
「・・・マジか。」
「マジです。」
頭を抱えて小さくなった山野さんの背中に、おれはそっと頬を乗せた。
「だからね、中島くんは盗撮してないです。ゲームの話しか、してないんですから。」
山野さんが一瞬、小刻みに震えた。
「・・・だけど、メガネがGPSの犯人だ。」
「え。」
背中を起こした山野さんは、おれをギュッと抱き寄せた。
「思い出して。メガネから渡された封筒って何だった?」
「・・・あ。」
カバンに入れっぱなしだ。
「封筒、開けてないです。」
そう言うと、山野さんは厳かに述べた。
「予言するよ。その封筒、絶対破れてカバンの底に沈んでるから。」
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