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出会い
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ガシャンと大きな音がした。
それが馬車の倒れた音だと分かるまでに、しばらくかかった。
衝撃に翻弄された頭と体の制御をなんとか取り戻して、僕と重なるように倒れていた姉を揺り起こす。
馬車の外からは、低く恐ろしい唸り声と、父さんの叫び声。
続いて母さんの悲鳴。
僕達に、馬車から出ないよう叫んだ母は、背中からざっくりと魔物に裂かれた。
馬車が倒れた拍子に入った亀裂から、それはなぜかハッキリ見えた。
僕達は、動かなくなった両親が魔物に食べられるのを、ただ見ている事しかできなかった。
両親を食べ終えた魔物が、こちらに向かって来る。
姉のエレノーラが、僕を強く抱きしめた。
僕達は、あれに食べられるんだ。
怖くて怖くて、逃げ出したい気持ちはあったけど、もう逃げられないという事は、なんとなく理解していた。
不意に、魔物の体が大きく揺らぐ。
魔物の口から、地を裂く様な悲鳴が上がる。
雄叫びにも近いそれを撒き散らしながら、地響きを立てて魔物は倒れた。
周りから、聞いたことのない男達の声がする。
それは一人二人じゃなくて、大勢の声で、僕の知らない言葉が沢山飛び交っていた。
「なんだ、まだ生き残りがいたのか」
不意に近くで聞こえた声に顔を上げると、今は真上になっていた馬車の窓から、深緑と水色の二つの色をした瞳が僕達を覗き込んでいた。
(森と、空の色だ……)
「二人だけか?」
黒髪の男が尋ねる。
男の長い横髪がサラリと肩から流れ落ちるのを、ただぼんやりと見つめていた僕の隣で、姉が震える声で答えた。
「はい……他は皆、魔物に……」
「そうか」と言った男は、ほんの少し何かを考えるように眉を寄せる。
「……お前達はどうしたい?」
聞かれて、姉が体を強張らせるのが分かった。
でも、僕にはそれが何故かまでは分からない。
「俺達は盗賊だ。捕まれば、死ぬより酷い思いをする事もある。
それが嫌なら、俺がこの場で殺してやる。……まだ今なら、仲間と一緒に逝けるだろうよ」
「あ……あぁ……」
いつも気丈な姉が、顔を覆って崩れた。
それを見て、男の空色の瞳が僅かに揺れる。
まっすぐで綺麗な眉がグッと歪むのをみて、僕は焦った。
だって、僕には、男が何かとても優しい事を言った様に聞こえたんだ。
「ぼ、僕は、お兄さんと、一緒に行きたい」
僕の声に、男が僕を見た。
驚いたような顔で、僕を見ている森と空の色をした瞳。
やっぱり、すごく綺麗だと思う。
「……本当に、いいんだな?」
そう言って僕を見る男の瞳が、僕をとても心配しているように思えて、僕は大きく頷いた。
こうして僕達は、盗賊団に拾われた。
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