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第一夜
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昔々、あるところに、砂漠の王様がおりました。
王様は大変な暴君で、国の村という村から美少女美少年を徴用してきてはこれを侍らせ、しかし、三日と経たずに飽いては、その者たちを処刑してしまうのでした。
王様の処刑は、そのお優しそうな美しいお姿に似つかわしくもなく、気まぐれで、それはそれはむごたらしいものでした。
ある者は、毒蛇と蠍の群れ成す穴へ放り込まれ、王様はその断末魔を肴に、毒めいた緑色のお酒を飲まれました。
ある者は、焼いた鉄棒の上を歩かされ、上手く渡りきれたなら許してやると仰せられました。しかし、途中で塗られた油に足を滑らせ、下で待ち構えていた炎に呑み込まれました。王様は、人間の焼けるさまを肴に、めらめらと燃えるような紅いお酒を飲まれました。
王様は、策謀渦巻く蟲毒のような王宮のみをご存知で、育ってこられました。でしたから、王様にとっては人間は信ずるものではなく利用するもの、そうして、苦しめて出し抜いてもてあそぶものだったのです。
ただ、こういった境遇でも明るく健やかに育つものもおりますから、王様のこの資質は、お育ち遊ばれた境遇のみにはあらざるものと、言わなければなりますまい。
こんな王様ですが、政治に長け、また、強い軍隊と奸智に長けた頭脳をお持ちでしたから、この悪癖さえなければよい王様とも讃えられた筈でした。
少しの犠牲で国が治まるのなら、と、民たちは王様に反乱を起こす気配もなく、王様は、好きなように好きなだけ、暴虐の限りを尽くしました。
さて、今宵の王様の夜伽の相手は、褐色の肌に銀の髪、蒼い瞳がりんりんと輝く、利発そうな少年でした。夜伽も終わり、飽いた王様が珍しく一思いに楽にしてやろう、と、少年の胸の上へ短刀を振り上げると、少年は臆する様子もなく、静かな声で、お願いがございます、と申したのです。
さすがの邪知暴虐の王様も、少年の、一種の気合のような迫に圧されて、一瞬、血を流すことをためらいました。
すると、少年は言うのでした。
「今日の夜伽の身に余る光栄を記念して、ひとつ寝物語をお聞かせいたします。どうか、私の命を奪われるのであれば、その後にしてくださいまし。」
そうしてわたくし、月が見ているその下で、不思議の物語の幕が開いたのでした。
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