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おにぎり。にしおりをはさみました!
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おにぎり。
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例の電話から一夜明け――
結局信と葵は書斎のソファーで互いにピッタリとくっつきながら眠りにつき…
信は自分の腕枕で未だ死んだように眠る葵を起こさないようソファーから降りると
軽くシャワーを浴び…
ワイシャツとスラックスに着替えてから寝室へと向かい
昨夜の自分たちの汗と精液で酷い有様になっているベッドを見て軽く絶望すると――
信は深い溜息と共にシーツとベッドパッドを引っぺがしにかかった
―――あー…こりゃシーツもベッドパッドももう…捨てるしかねーな~…
しっかしヒッデぇ~有様だなこりゃあ…
セックス覚えたてのガキじゃあるまいに…
どんだけ葵相手に盛ったんだよ俺…
昨夜の葵との熱い情事を思い出し…
信は思わず「あ、ヤベ。」と呟きながら頭をフルフルと振ると
心を無にしながら黙々とシーツとベッドパッドを片していき――
―――こんなにグシャグシャなのに
被害がシーツとベッドパッドだけで済んだのは幸いか…
確か今日は午前10時にハウスキーパーがウチに来る予定だから――
予備のシーツとベッドパッドを出しとけば
後は勝手にベッドを整えてくれるだろう…
このゴミとなったシーツとベッドパッドは
朝食作る前にこの階にあるゴミ収集場所にパパッと捨てて来るか…
いや~…こういう時タワマン便利よな…
24時間好きな時にゴミ出せんだもん…
俺が学生の時に借りてたアパートなんて
ゴミの種類ごとに捨てられる曜日とか決まってて地味に面倒くさかったし…
それに比べたらマジ便利になったもんだ。
そんな事を考えながら信は大きなゴミ袋に
シーツとクルクルと巻いたベッドパッドを入れて寝室を後にし――
自分たち以外誰も住んでいない最上階のゴミ収集場所に置かれているダストボックスに
そのゴミを詰め込んで足早に部屋に戻ると…
信はキッチンで手を洗い…
冷蔵庫の中から朝食に使えそうな食材を取り出しながらワークトップの上に並べていく
―――ん~…っと…?
卵と豆腐…豚バラに大根…ワカメにほうれん草か…
これだけありゃあ十分だろ。
さて――作りますか!
信は軽く気合を入れ、紺色のエプロンを身に着けると
早速調理に取り掛かった…
※※※※※※※
時刻はもうじき午前七時を回ろうかといったところ
「おや!これはまた随分と美味しそうな朝食だねぇ~…」
信の用意した黒いパジャマを着た稔(みのる)が
スマホ片手にダイニングキッチンに姿を現し…
ダイニングテーブルの上に並ぶ朝食を見て
満足そうな笑みを浮かべながらそう口にすると――
キッチンから戻って来た信もまんざらではない表情を見せ…
「…だろ?
今朝は和食な気分だったから、和食にしてみたんだ。」
「ほ~…」
テーブルの上には白いご飯に豆腐とワカメの味噌汁…
豚バラ大根に、ほうれん草の白ゴマ和えにだし巻き卵といった和食が並び…
稔は席につきながらマジマジとそれらの料理を見つめ――
「それにしても…相変わらず信は料理が上手だねぇ~…
一体誰の影響を受けたんだか…」
「……少なくとも親父とお袋ではないな。
お袋に至っては料理してるとこ見たこともねーし…」
「あ~…でもほら!恵さんだって一応お前が小学校の遠足の時とかに
お弁当作ってくれた事あったろう?!」
「………」
その言葉に信は眉を顰め…
“コイツ何言ってんだ?”と言いたげな怪訝な表情を稔に見せ…
「…弁当って……おかずは全部冷凍食品で――
お袋が唯一作ったものといったら“大人の両手で握っただけ”の…
海苔でご飯が見えなくなるほどビッチリと隙間を塞いだ
黒くて丸くてバカでかいあの――
おにぎりの事を言ってんのか…?」
「あ…」
信の瞳からは光が失われ…
何処か遠いところを見つめながら言葉を続ける…
「…よく覚えてるわ……
お袋が作ってくれたおにぎり…
周りの友達は皆――
なんか可愛らしくて色とりどりなおにぎりを笑顔で食っているさなか…
俺はあの黒くてバカでかいおにぎりを二個…
羞恥心と戦いながら黙々と食ってたっけか…」
『うわっ……信のおにぎり黒っ!でかっ!』
『な~。デカいよな~…信のおにぎり…
俺小1の時から信と一緒のクラスだけど
コイツが遠足とかで持ってくるおにぎりずっとコレだよ。』
『マジでっ?!デカすぎない??…信……あんま無茶すんなよ?
もし食べきれないようだったら残した方が…』
『ん…大丈夫……それにせっかくお母さんが俺の為に作ってくれたおにぎりだから…
コレだけでも全部食べないと…』
『そっかぁ~…それじゃあ俺達向こうの遊具で遊んでっから――
信もソレ食い終わったら俺達のとこに来いよ!
それじゃ行こうぜ!』
『お~!』
『………』
―――皆が弁当を食べ終え…
それぞれが思い思いの場所を探検したり遊んだりして遠足を満喫している中で…
俺はせめて母親が作ってくれたおにぎりだけは食べ終わろうと
一人必死にバカでかいおにぎりを食べ続け…
そして俺がようやくおにぎりを食べ終わった頃にはもう…
昼食後の自由時間はほぼ終わりを迎え――
俺は結局友達とは遊ぶことが出来ず…
帰りのバスの中で俺は何時も気まずい思いをしてたんだっけか…
「フッ…」
信の口元には力のない笑みが浮かび…
信は更に遠い目をしながら自分の朝食をテーブルの上に並べていく…
するとそこにリビングの方からグレーのワイシャツを着た葵が姿を現し――
「…のぼる……おはよ…」
「ん?ああ…おはよ…………う”っ?!」
「…?どーした?のぼ……
ッ!?!?」
信が葵の姿を見た途端、顔を赤くしながら絶句し――
そんな信の様子に稔も釣られて葵に視線を向けると…
そこにはグレーのワイシャツを上に着ただけの…
恐らくシャワーを浴びたばかりと思われる葵が
何処かポォ~…っとした様子でその場に立っていて――
「ッ葵お前……何て格好してんだっ!」
「えへへ~……彼シャツしてみた~…
どお?信……俺――似合ってる…?」
「ッそりゃあ似合うって言うかグッとクルっていうか…
つか朝から何煽って――
ん…?ちょっと待て…」
「…?」
信は持っていた味噌汁をテーブルの上に置き、葵の元にそそくさと近寄ると…
スッ…と葵の額に片手で触れ――
「あ……信の手――冷たくてきもち~ねぇ…」
葵はウットリとした様子で瞼を閉じる…
しかしそんな葵の様子とは裏腹に信は眉を顰め…
「…葵……お前熱があるぞ。」
「え~…そんな事ないよ……
さっきシャワー浴びたばかりだからきっと身体がまだ火照って…」
「…いや、これはそんなんじゃない。
親父。俺今すぐベッド整えてくるから、葵の事頼む。」
「分かった。」
そう言うと信は未だポォ~っとしている葵を稔に任せると…
急ぎ足でその場を後にした
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