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4-4にしおりをはさみました!
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4-4
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「俺もさ、潤一君のしたこと、全部許せる訳じゃないよ? それに雅也だって、潤一君のためって言いながら、結果アンタに酷いことした訳だし……」
簡単に許されることじゃないってのは、俺だって分かってる。
でもだからってこのまま、俺達の関係が壊れて行くのを黙って見てるわけにはいかない。
だって、もし壊れてしまったら、翔真さんの気持ちはどうなる?
智樹の想いは?
「潤一君てさ、昔かっら不器用なとこあったじゃん? 口では恰好いいこと言っててもさ、実際凄くは弱くて、一人では何も出来なくてさ……。だから……」
だからって、こんな滅茶苦茶なことに雅也を巻き込んで良いわけじゃないけど……
唇をキュッと噛み締めたまま俯く智樹に、それ以上かける言葉が見つけられなくて、俺は智樹と視線を合わせることなく、重ねた手に力を込めた。
すると、そこにポツンと赤い雫が、一粒二粒と落ちて来て……
見上げると、余程キツく噛み締めていたのか、唇の端から血が溢れていた。
「ちょ、ちょっと、何やってんですか!」
慌てた俺は、咄嗟にベッドの下にあったティシュを手に取り、抜き取った数枚を重ねて、智樹の唇に宛がった。
ティッシュは、みるみるうちに赤く染まっていった。
それを見て漸く、俺は智樹が受けた心の傷はが、想像以上にデカかったことを知った。
力づくで……、それも友達だと思っていた相手に、無理矢理身体を開かれることが、どれだけ智樹の心を傷付けたのか……
上っ面だけの優しい言葉なんて、何の役にも立ちゃしないってことを、俺が一番良く分かってる筈なのに……
馬鹿だ俺。
今にも零れ落ちそうなくらい、目に一杯涙溜めてんのに、馬鹿だ……
「……なんなんだよ、お前……」
「え……?」
腫れているようにも見える赤く染まった唇が震え、俺のてのなかで、キツく握りしめた両の手が震えた。
「報酬なんだって……、金のために身体売ったんだって……、そうやって自分の中でケリ付けようとしてんのに、何なんだよ」
智樹は俺の手を振り解くと、俺の身体まで押し退け、ヨロヨロと立ち上がり、俺の目の前で着ていたセーターを脱ぎ捨てた。
「智樹……?」
決して逞しいとは言えない細い身体の、至る所に無数に散らばる赤く鬱血した痣と、手首に残る拘束の跡が痛々しくて、俺は思わず目を背けた。
なのに智樹は、
「見ろよちゃんと……」
振り払われ、行き場を失くしていた俺の手を取ると、痣の一つ一つを指先に確かめさせるように触れさせた。
「これも、これも、これも……っ! 全部アイツらが……」
徐々に乱れていく呼吸に合わせて上下する肩と、触れた肌に感じる、通常よりも高めの体温に、
俺は立っているのもやっとの智樹の身体を抱きしめた。
止められない涙が、俺のシャツを濡らして行くのが、抱き留めた胸から伝わって来る。
俺は、声を殺して泣く智樹の背中を、そっと撫でた。
「落ち着いて? もう誰にもアナタを傷付けさせないから、だから……」
嘘だ。
誰も傷付けないなんて、その場凌ぎの嘘。
俺がこれから告げようとしている言葉は、智樹が負った傷を更に深く抉ることになる。
俺はどうしたらいい……
翔真さんの選択は、世間一般からしたらごく当たり前のことで、友達だと言うのなら、無条件で喜ぶべきこと。
でもそれでいいの?
翔真さんは、本当にそれでいいの?
俺には分かんないよ……
確かに、本人からは伝えづらいだろうからと、俺が自ら伝言役を買って出たわけだけど、智樹にはそれとなく伝えとく、って。
だけどさ正直、苦しいよ……
「しょ……ま……、助けて……」
多分無意識なんだろうけど、何かに縋りたくて、翔真さんの名前を呼んでしまうくらい、翔真さんのこと思ってるのに……
ねぇ、俺はどうしたらいい……
出来ないよ、これ以上この人を傷つけるなんて、情けないって思われるかも知んないけど、俺にはやっぱり無理だよ……
どれくらいの間そうしていたのか、カーテンの隙間から見える窓の外は、もうどっぷりと日が暮れていた。
泣き疲れたのか、ぐったりと俺に身体を預ける智樹をベッドに横たえ、額に手を宛てた。
思った以上に熱が高い。
俺はスマホを手に取り、
「智樹熱あるみたいだから、今夜は付き添うよ」
要件だけの短いメールを雅也に送った。
濡れたタオルを額に乗せてやると、智樹が薄らと瞼を開くけど、熱が高いせいか、凄く潤んでいて……
「今夜は俺が傍にいますから、安心して寝てください」
頬をそっと撫でながら、優しくそう言ってやると、智樹は小さく頷き再び瞼を閉じた。
その時、閉じた瞼の端から、涙が一筋頬を伝った。
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