アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
13にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
13
-
ミーハを家の前で下して、馬を繋ぐために裏に回ると、中から「ミーハァ!」というハマーの大声が聞こえて来た。
「大丈夫だったか? ケガは? 心細かったよなぁ~!」
ハマーの大声に隠れるように、ミーハが「あの」とか「うあ」とか、戸惑ってるような声を出してて、でも中が見れねーでイラッとする。
馬の手綱放り出して、中に怒鳴り込みに行くか――とも思いつつ、そういう訳にもいかねーから仕方ねぇ。
裏の格子戸に繋ぎ、水を汲んで馬の足元に置いてやる。
けど、うちには馬小屋も飼い葉桶みてーなんも何もねーし、エサになるようなモンもこんな時間じゃ買えそうにねぇ。
雑草くらいなら生えてるし、腹がすきゃそんなもんでも食うだろうか。
「朝イチでメシ買ってやんねーとな」
オレはそう呟きながら馬の鼻づらを撫で、裏口から家に入った。
家の中には、なんか美味そうな匂いが漂ってた。ぐぅ、と腹が鳴る。
そういや、ふもとの村で昼メシ食った後、何も食べてねぇ。
「なんだ?」
言いながら奥に入ると、ハマーが「ごめん、ごめん」とか謝りつつ、ミーハの頭を撫でている。
いや、別にハマーのせいじゃねーし。つか、気安く触んなよな!?
一瞬ムカついて殴ってやろうかと思ったけど、馬のこととか色々世話になったし。ぐいっと引き離すだけで我慢してやる。
「困ってんだろ。いい加減にしろ」
ジロッと睨んでやると、ハマーはもっかい「ごめ~ん」と言って、気まずそうにへらっと笑った。
「あっ、二人とも、お腹すいてないか~?」
へらへら笑いを収め、気を取り直したように、ハマーが「じゃーん」と食卓を見せた。
「材料は買ったけど、道具は勝手に使わせて貰ったよ~。まあ、大したモンは作れないけどさ」
謙遜したようにそう言ってるが、スゲーうまそうなニオイだ。
肉にシチュー、それにパン。
ぐぅぅ、とミーハの腹が鳴る。オレだって、カラカラの喉に唾液が湧き上がってくる感じだ。
「さあ、食べよ食べよ~」
ハマーの陽気な声に、誘われ、オレ達は素早く食卓を囲んだ。
匂いを裏切らねぇ、満足な美味さで助かった。
「うお、な、何か、懐かしい味、だ」
ハマーのシチューを一口食べて、ミーハがぼんやりした顔で言った。
「オレんちの母ちゃん直伝のシチューだからな! ミーハはうちでよく一緒に食ってたよなぁ」
ハマーの嬉しそうな様子に、ミーハはキョドキョドと視線を揺らしてる。
覚えがあんのか、ねーのか?
「お前、シチューのニンジンはデカい方が好きだっただろ? だから……」
と、昔話を始めるハマーに、胸の奥がモヤモヤした。
苛立ちを隠して立ち上がった時、何かがテーブルとぶつかって、ゴツンと音を出した。
何かと思ったら、ポケットに入れてた大きな石だ。忘れてた。
「そういや、焼け野原んとこに幾つかあったんだけどさ……」
テーブルの上にゴロリと出すと、見たこともねーような、銀っぽい青い石だった。
「あれ? これ……」
まさか、宝石の原石か? ちらっとミーハの顔を見る。
魔法の炎で消し炭になったモンスターから、たまに錬成されることがある、とは聞いてたけど。マジか!?
「うわー、結構大きいなー」
ハマーが感心したように言った。サファイヤじゃねーかって。けど、その後。
「でもミーハなら、こんくらいの原石の研磨なんか、一発だもんなー?」
そう言ってハマーは、ミーハの頭を誇らしげに撫でている。
だから、気安く触んなっつーのに。
「研磨?」
オレはまた、2人の間に割って入った。
どうも、「前のミーハ」が小さい頃に、会得してた魔法の1つらしい。杖と一緒に持ってたっていう、古い呪文書の1つなのか?
「この魔法で、ミーハはお金を稼いでたよー。まだガキだったし、もしかしたら安くこき使われてたかも知んないけどさ。でも、これで家計を助けてあげてたよね~?」
ハマーにそう言われても、やっぱミーハは何も思い出せねーようだ。
「……あー、そうか、覚えてねーのかぁ」
ハマーは金髪をガリガリ掻いて、また「ごめんな」と謝ってる。
うーん、と腕組みして何かを考えてたけど――何を考えてたか分かったのは、翌朝になってからだった。
一つしかねぇベッドでどうやって3人で寝るか。
穏便に相談した結果、ミーハがベッドで、オレとハマーが仲良く床で寝ることになった。
「お、オレも!」
ミーハはそう言ってたが、どう考えても今日、1番働いたのはミーハだし。
コイツをベッドに、っていうのはオレもハマーも異論がなかったから、そこは協力して無理矢理寝かせた。
ハマーは色々、オレと話がしたかったみてーだけど……オレの方は、わだかまりがなかなか溶けねーし、仲良くはできそうにねぇ。
ピロートークなんかする気にもなれなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 102