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ミーハのじーさんは信じらんねぇって顔で立ち上がり、孫の顔を見つめた。
「お前、今のは『転移』か? 使えるようになったのか!?」
祖父の問いに、「うん」と無邪気にうなずくミーハ。ミーハのじーさんの目は感動にちょっと潤んでて、厳しいって印象とは真逆の顔だ。
「そうか、よかったな」
そう言って孫の頭を撫でる様子はホントに普通のじーさんで、ちょっとだけホッとした。
オレにちらっと向けられる目線はあんま好意的じゃねーけど、ミーハに優しいんならそれでイイ。
「オレ、もう『帰宅』も使える、よっ」
「そ、そうか……!」
感動に言葉を詰まらせてる様子は、ミーハと違ってちっとも可愛くはなかったけど、自慢げなミーハがその分可愛かったから、まあいいかなと思う。
ただ、このじーさんの家をミーハが「家」だって自覚できねーでいるのは事実だ。
親との死別が絡む「帰宅」はともかく、「転移」がトラウマになっちまったのは、確実にスパルタが原因だから、その点はいいように思えねぇ。
この年で、200以上の魔法を使える天才。
けど「転移」や「帰宅」が使えなくて、そのせいで嫌味言われる日常。
ミーハに厳しくしてたんは、じーさんじゃなくて他の魔法使いたちなんかな? それとも、魔法の訓練ではじーさんも厳しーんだろうか?
前に魔法使いたちの集団に出くわしたとき、「転移」使えねぇって、ミーハが他のヤツらから嫌味言われてたの思い出す。
「やはり使えませんか」って呆れたように叱責する様子は、とてもミーハのこと大事にしてるようには見えなかった。
あん時のこと思い出すと、腹ん中にモヤモヤが溜まる。
全部の記憶を取戻し、「転移」も「帰宅」もそれ以外の魔法も使えるようになったミーハだけど……だからって、この家で大事にされるとは限らねぇ。
やっぱ、ここに置いとく訳にはいかねぇと思った。
「ミーハが『転移』使えなくなったのは、アンタらのせいだろ!」
ゆっくりとミーハに近寄りながら、じーさんを睨んで言い放つ。
「お前は……」
じーさんはオレの顔見て顔をしかめてたけど、生憎それに怯んだりはしなかった。
「モンスターの出るようなトコにわざと置き去りにして、『転移』して帰れ、っつったんだろ。一体何歳ん時の話なんだ? 怖くなって当たり前だっつの。そんなのが正しい教育なのかよ!?」
「それは一体……?」
オレの言葉に、ハッと表情を変えるじーさん。
オレの顔を見て、ミーハの顔を見て、それが嘘じゃねーってことに気付いたらしい。信じらんねーって顔で、「本当なのか……?」って呟いてた。
「何ということだ。ミーハ、なぜ言わなかった?」
祖父の言葉に、ミーハは眉を下げ、泣きそうに顔を歪めてる。
「だ、だって、それは、オレがヘボだ、から」
ぼそぼそと自信なげな声で、自虐的なことを呟くミーハ。
さっきのにこにこ顔とはまるっきり真逆で、そんな顔させてるシーン家に苛立ちが募る。
思わず肩を抱き寄せると、ミーハが甘えるようにオレの背中にしがみついた。
「どんな英才教育したのか知んねーけど、ミーハをこんなビビリで卑屈で自己評価低いヤツにしちまったのは、確実にあんたらの責任だ。コイツをこの家には置いとけねぇ」
ミーハを抱き締めながら言うと、じーさんは白髪交じりの眉をしかめて睨んで来たけど、オレに何も言い返すことはなかった。
しばらく黙ってオレらを睨みつけた後、じーさんは疲れたようにため息をつき、元のイスに力なく座った。
「すぐに調べさせる。それと、まだお前を認める訳にはいかん」
呟くように文句を言い、じーさんは側に立てかけてあった自分の白い杖を振った。
魔法で誰かを呼んだのか、間もなく部屋の扉が開いて、中から数人の使用人が入ってくる。
「客間に案内しろ」
じーさんの命を受けた使用人はオレらを豪華な客間に案内して、ミーハから肉を受け取り、一礼して去ってった。
「に、肉、焼いて貰おーね」
ふひっと不器用な笑みを浮かべるミーハが、可愛くてちょっと哀しい。
落ち込むことあっても、そうやって切り替え早くしてかねーと、生きていけなかったんかなと思う。
現実逃避の一種かも知んねぇ。けど、それを責める気にはなれねぇ。
「ドラゴンの肉なんか美味ぇのか?」
豪華なソファにドスンと座り、ミーハを手招きして一緒に座らせると、ミーハは「美味しい、よっ」って笑って、それからオレにもたれかかった。
夕飯は、ミーハと2人で客間で食った。
オレを客として扱いたくねーのか、それともミーハに配慮してのことなのかは分かんねぇ。けど、オレらには2人の方が有難ぇから文句はねぇ。
上流階級のメシがどんなモンかは知らねーけど、出されたメシはサラダもスープもゴツいステーキもパンも、高そうな皿に上品に盛り付けられてて、高級感に溢れてた。
サラダもスープも普通の料理だと思うのに、皿が違うだけでこんなにキラキラに見えるってすげー意外だ。
けどもっと意外なのは、ドラゴンの肉がすげー美味かったことだ。
あのゴツゴツのウロコで、すげー固かったロックドラゴンの肉なのに、ナイフで難なく切れることにビックリした。
口ん中に入れると、数回噛むだけで肉汁がじゅわっと溢れて、蕩けるように消えていく。
「マジか……美味ぇ……」
思わずぼやくと、「美味い、よねっ」ってミーハも機嫌よく笑ってて、その眩しい笑顔にホッとした。
風呂も、嘘みてーに豪華だった。浴室は勿論、湯船も広くて、声がうわんと反響する。
体を洗ってやりながらイタズラを仕掛けると、「ちょっ、ああんっ」って喘ぐ可愛い声も反響して、ミーハには悪ぃけど楽しかった。
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