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決して油断してた訳じゃねぇ。それでも、ヤツらの速さに目が追い付いていかなかった。
ザッと砂煙が立つ。と、次の瞬間、ものすごいスピードで砂色のモンスターが飛び掛かって来た。
反射的に体を捻って、ギリギリで避ける。
剣を振り上げる暇もねぇ。
砂の上をゴロッと転がって距離を取り、ハッと顔を上げると――モンスターと目が合った。
琥珀色のつり目。ミーハのに似てんのに、まるっきり違う。色も、温度も。
「……来い!」
剣を構えて挑発すると、デザートライオンが太い前足で砂をかいた。
モンスターの吐き出す火気が、ぶわりと周りの空気を焼く。その火気を打ち消すかのように、ミーハが水系の呪文を唱えた。
「ウォーターボール! ウォーターボール! ウォーターボール!」
『水球』3連発。じゅっと蒸気が立ち上り、蒸れた砂のニオイを嗅いだ。
蒸気の向こうで、モンスターが一瞬たじろぐ。獰猛なケモノの瞳が、一瞬オレから逸らされる。
「今、だ!」
なんて、合図される必要もねぇ。
「うぉー、らぁぁぁぁっ!」
気合と共に声を上げつつ、剣を振り上げ、振り下ろす。
避けられる。空振り。けどすかさず取って返して、斜め後ろに剣を振る。小さな手応えと共に少量の血が散って、まずは傷を負わせたと悟った。
反動でよろめく。
どこに、どれくらいの傷、なんてのは確認できなかった。体勢立て直すのに精いっぱいで、さすがにそこまでの余裕はねェ。
ただ、手負いのモンスターは、凶暴度が増すみてーだ。
グォォ――ァ。砂色のたてがみを振り乱し、大口を開けてモンスターが吠えた。ぶわりと吐き出される火気。
けど、怯んでて勝てるハズもねぇ。
「まだまだ!」
オレは剣を構えたまま、自分から砂を蹴った。
「ウォーターボール!」
ミーハの魔法が、デザートライオンの動きを止める。
オレは高くジャンプして、着地と同時に剣を振り降ろし、切りつけた。渾身の一撃。
剣がモンスターの肩口に深く沈む。
ルナが前に、ハイランダーウルフの首を切り落とした時のをイメージしたんだけどな。体重全部乗せても、やっぱ、天才剣士みてーにはいかなかったようだ。
パワーの差か、熟練度の差か?
断末魔の唸りを上げて、モンスターの巨体が横倒しになる。ドウッと起こる、砂埃。
けど、1頭やったからって終わりじゃねぇ。ノルマは2人で3頭だ。
後2頭! どこにいる!?
オレは油断なく気配を探りながら、モンスターに刺さった剣を抜こうとした。
向こうではタオとルナが、それぞれのやり方で戦ってる。
今は2人が引き付けてくれてるけど、いつモンスターがこっちを意識するか分かんねぇ。グズグズしてる場合じゃねーのに。
「くそっ」
剣が抜けねぇ。肩肉にぎっちり食い込んでるみてーだ。
ウソだろ、体重乗せたからか?
ああ、くそ、予備に古い方の剣、持って来とけばよかった。と、そんな後悔してる暇なくて。
「ミーハ、燃やしてくれ!」
オレは後ろを見張ってくれてた恋人に、魔法を頼んだ。
剣の食い込んだデザートライオンの死体を、『火球』で炭にしてくれ、って。
そう、オレが頼んだんだ。
だから、こっから起こった事は、オレの責任だ。全部オレが悪い。
オレがモンスターから数歩下がると、ミーハが杖を構え、凛とした声で唱えた。
「ファイヤーボール! ファイヤーボール!」
魔法の『火球』がモンスターの肉を焼き、刺さってた剣が地面に落ちた。
けど、やったと喜んだのは一瞬、で。
「逃げろ、チビ!」
「アル!」
ルナとタオの声が響いた、と、脳が意識するより早く、目がデザートライオンを捉えてた。
砂を蹴り、軽やかに駆け寄るネコ科のケモノ3頭。
オレは視界の端で、ミーハが杖を構えんのを見た。その右手首には、オレのやった恋人の証が光ってる。
デザートライオンは火系のモンスター。死んでたらともかく、生きてる間に同じ火系の術はほとんど効かねぇ。
ミーハもそれは分かってるハズだったのに――やっぱ、咄嗟の時に出ちまうのは、一番得意な火系の魔法だったらしい。
「グランドファイヤー!」
ミーハの構えた古い杖から、ゴウッと『劫火』が広がって、モンスター3頭を直撃する。
『劫火』の炎は、デザートライオンの全身を包み込み――しまった、と思った時には、もう遅かった。モンスターは誇らしげに、全身に炎をまとってた。
「ちっ」
舌打ちしながら、剣を拾う。
さっきモンスターの死肉を焼いた『火球』のせいで、鉄が焼かれてとんでもなく熱い。
じゅう、と自分の肉の焦げる臭いが鼻をついた。
けど、ヤケドなんか、後で治療すりゃいーし。意地でも柄を離さねェ。逆にぎゅっと握り締め、オレはさっきと同様に、ファイヤーライオンに切りかかった。
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