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ミーハに腕枕したまま、いつの間にか寝ちまってたらしい。ノックの音で目が覚めた。
ゴンゴンゴン! ゴンゴンゴン!
「コラ、まだ寝てんのか!」
聞き覚えのある怒鳴り声に、ハッとしてベッドから飛び降りる。ルナだ。
「ミーハ、起きろ」
慌てて服を着ながら恋人を揺り起こすと、ミーハはぽかんとした顔で起き上がってオレを見た。
ゴンゴンゴンゴン!
ドアの外から響くのは、相変わらず苛立ったようなノック。
「起きてるよ! ちょっと待て!」
オレは大声で怒鳴り返し、ミーハが服を着るのを手伝った。
起きてるっつーのに、ゴンゴンゴンゴン、ノックする音はまだやまねぇ。
「早くしろ」って。だからやってるだろってのに、落ち着きのねーヤツだな。まあ、寝こけてたオレらもワリーけどさ、こういうとこホント、タオもルナも同じだと思う。
フリーダム!
「悪ぃ、お待たせ」
謝りながら鍵を開けると、ガッと戸を開けられて、ボカッと殴られた。オレだけ。
「オリャー『休め』つったんだ。ご休憩しろとは言ってねぇ!」
って。なんでバレたんだ?
勘の良いとこもやっぱ似てんな。そう思いつつも逆らわず、軽く腹ごしらえして出発になった。
出発の前に、タオがオレに何かを差し出した。
「これ、着けとけよ」
って。何かと思ってよく見たら、肩とひじに着ける簡素なアーマーだ。
「剣が長くなった分、まだ余裕ありそーだったけどな。でも、お前が敵の急所を一突きしてんのと同時に、左の肩からガブッとやられたら避けようがねーからさ」
真面目な顔でそんなことを言いながら、タオはてきぱきと、アーマを着けんのを手伝ってくれた。
ふらっと1人でどっか行ったと思ったら、どうもこれを探してくれてたみてーだ。
「……ワリー。あんがとな」
礼を言うと、タオは首の後ろで両手を組んで、いつもの調子でギャハハと笑った。
「いーって。代金は、成功報酬でな!」
無事に成功すんの前提で、そういうセリフをサラッと言えちまうとこも、やっぱ天才ならではなんだろうな。
「おー、必ずな」
オレはニヤッと笑って、タオと拳をコツンと合わせた。
デザートライオンを残らずおびき寄せるため、囮になるような肉を用意した方がいい。そう提案したのはオレだけど、まさかヤギ1頭、まるまる用意するとは思わなかった。
いや、勿論、首を落として皮をはいだ、加工済みのヤツだけど。
つーか、なんでオレらはサソリ食って、モンスターに肉食わさなきゃいけねーんだ?
「モンスターなんかにくれてやんのは、勿体ねーな」
オレがそういうと、ルナも自分が用意したくせに、「そーだろ?」とうなずいてる。
「肉を食われる前に、全部倒しゃいーんだよ」
って。軽く言ってくれるよな。
けど、そんくらい軽い気持ちでいた方がいーんだろうか? 天才2人がリラックスしてるせいで、オレも朝ん時みてーに、変に緊張することもなかった。
街から砂漠まで、ヤギ肉まるごと1頭を軽々と担いで運んだルナは、街道から少し外れたところに、「どりゃっ」とそれを置いた。
陽はまだ高い。けど、西の空がちょっとオレンジがかって来て、夕方になんのもそう遠くねーなと思わせた。
かすかに風が吹いてて涼しい。
はあ、と汗をぬぐう。
見わたす限りの砂原には、モンスターの影もねぇ。今はサソリもいねーみてーだ。けど逆に、日暮れが近付くにつれ、危険度も増して来るんだろう。
「そんなに待たねーよ。風があるからな」
油断なく周りを見回しながら、ルナが言った。
風のせいで、オレらのニオイが向こうに知られやすいらしい。それはオレらも同じだけど――やっぱ人間より、モンスターの方がニオイに敏感に決まってる。
ふと、風向きが変わった。
デザートライオンはサソリと違って、砂ん中に隠れることはねーハズだ。現れる時は、必ず砂の上を駆けて来る。
いつの間にか囲まれてる、なんてことは有り得ねぇ。
有り得ねぇと思うのに――イヤな気配に、腹の底が冷たくなった。
何も臭わねーけど、臭う気がする。
緊張のし過ぎで過敏になってんのかと一瞬思ったけど、そうじゃねーみてーだ。
ルナもタオもミーハも、息を詰めて気配を探ってる。
「いっぺんに来たかぁ?」
はーっ、と深く息を吐きながら、ルナが剣の柄に手をやった。タオの方は、スラッと双剣を抜いて構えてる。
オレもタオにならった。剣を抜き、構える。
「手間はぶけて良かったじゃん」
カカッとタオは笑ってっけど、声は張りつめてんのが分かる。
やがて現れた、砂色のモンスターは6頭。6頭が互いに牽制するように、じりじりと間合いを詰めて来た。
オレらよりヤギ肉、ヤギ肉よりライバルのモンスター同士に、意識を向けて欲しかったけど。どうも、そんな思惑通りには動いてくれねーようだった。
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