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予想はしてたけど、タオにドラゴンを諦めさせんのには骨が折れた。
「えーっ、なんでーっ! オレだって戦ってみてーよ、ピンキードラゴーン!」
掲示板の前で喚きまくられて、目立つったらねぇ。
ここがオレらの町だったら、今更喚かれたって皆に知られてるだろうし、容赦なく「じゃーな」って放置もできたけど、首都ではさすがにそんな訳にいかねぇ。
かと言って、「分かったよ」なんて言ってやる事もできねーし。
「ざけんな、ムリだーっつの!」
大声で頭ごなしに怒鳴りつけて、強制連行するしかねぇ。
まあ、単純に体格はオレの方が上だし、タオは小柄な分、体重も軽いかんな。
「ズリーよ、ルナばっかドラゴンとやって、ズリーよ!」
首にホールドかけながらズルズル引き摺って行く間、タオは大声で喚き続けてた。
ホントやめて欲しい。ヤケクソか? ただのストレス解消? それともまさか、オレに対する嫌がらせ?
なんか、狩りに行ったって訳でもねーのに、どっと疲れた。
「あのな、ズリーとかそういう問題じゃねーんだよ。単純に2人とかじゃ無理だっつの」
まったく。
ここはオレらの町じゃねーんだから、「行きたい行きたい」つって天才剣士がいくら喚いても、「じゃー行こうぜ」みてーなノリで、気軽に参加者が集まる訳ねぇ。
第一、タオの双剣もオレの剣も、接近戦向けだ。ミーハのいねぇ状況で、剣が届く距離まで安全に、ドラゴンに近寄れる訳がなかった。
「誰だ、おい? ガキに剣なんか持たしたヤツは? オヤ呼んで来い」
掲示板の周りに集まってた、賞金稼ぎ連中もゲラゲラ笑った。。
「おいおい、お子ちゃまが何か言ってるぜ」
「いいねぇ、若いって。無邪気だねぇ」
とか。聞こえよがしに言われて、かなり気まずい。
ガキ呼ばわりするとか、侮ったみてーなコト言われてムカッとしたけど……まさか「この『赤い閃光』をバカにすんな!」とか叫ぶ訳にもいかねーし。
天才は天才らしく、どっしり構えて欲しいよな。
けどまあ、タオに「どっしり」は向いてねーから仕方ねーか。
「もー! アルがダメダメ言うからバカにされたじゃんかぁ!」
人混みから抜け出して首を放すと、開口一番文句を言われた。
「オレのせいかよ!」
反射的に怒鳴り返したけど、自業自得とはいえ、バカにされた本人が面白い訳ねーよな。
ちっと舌打ちを1つして、それ以上の文句を我慢する。
オレのレベルがタオくらい高けりゃ、そうか、ドラゴン捕獲だって、もっと気軽に「行こうぜ」って言えたかも知んねぇ。
オレと組んでるから我慢しなきゃなんねーようなもんだし、それについてはやっぱ、負い目に感じねーでもなかった。
ふてくされはしたものの、怒りとか不満とかを引きずらねーのがタオの長所だ。
「まっ、今回はしょーがねーな。けど、ミーハと合流できたら、3人で一緒に挑戦すんだぞ?」
そう言われると、「おー、いつかな」としか言いようがねぇ。
ホントはもうちょっとその前に、挑戦すべきモンスターがいっぱいいるような気がするけどな。
ドラゴンの話は一旦置いといて、その後は武器屋を覗いたり、薬草専門店を冷やかしたり、美味そうなモンが売ってりゃ買い食いしたりして、夜まで過ごした。
やっぱ、街が違うと店も違う。食いモンもなんか小さめでシャレてんのが多くて、「さすが首都だな」と2人で言い合った。
肉を串に刺して焼いた串焼きだって、一口の大きさが全く違う。
揚げ菓子も一回りくらい小さくて、口の小せぇヤツらが多いんかなって感じだ。
……ミーハの口はデカかったけどな。
思い出して、ほろ苦い気分がよみがえる。
あいつがいねーと調子が出ねぇ。タオを抑え込むんだって、1人じゃしんどい。早く顔が見てぇと思った。
日が暮れて、街にぽつぽつと明かりが灯り始めた頃、もっかいルナんちを訪問することにした。
うろうろ歩き回ったけど、ルナんちの場所は、もう誰かに訊かなくても迷わずにすんだ。
だって、イヤでも見逃しようがねーし。ルナの家の前にぶっ立てられたデカい黒い石は、夕陽を反射して輝いてた。
「マジ、スゲー目印だな」
ふっと笑いながら近付くと、家の窓から明かりが見える。
「よっしゃ、帰って来たか!」
タオははしゃいだ声を上げて、騒がしくルナんちの木戸を叩いた。両手で。
ガンガンガンガンガンガン!
「よー、いるんだろルナ! 開けてくれ!
ガンガンガンガンガンガン!
その騒音とリズムには、勿論聞き覚えがあった。
うるせーけど懐かしい。
ダンダンダンダンダンダン、って。ミーハと朝寝してる時、そうやって騒がしく叩き起こされた事あったよな。
案の定、ルナはすぐに現れた。
「うるせーぞ、コラ! 誰だっ!?」
怒鳴りながら外開きの戸を、勢いよく開けたルナは――オレらの顔を見せ、ハッと息を呑んだ。
一瞬黙りこんだタオは、それに気付いたんかな? 気付いたよな、野生児の勘って結構スゲーもんな。
「よお、来たぜ」
オレは、目の前に立つ長身の男の顔を見上げ、不敵にニヤッと笑って見せた。
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