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それでも僕は君が好き Ⅰ
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ここは、郊外ではあるけれども一応栄えた駅前にあるカフェ、カフェダイム。今日もモーニングの時間からそこそこ賑わっている。
「いらっしゃいませ。おはようございます。」
「結翔、おはよう。」
「智、おはよう。」
智が今日もモーニングを食べにやってきた。挨拶を交わすとカウンターの奥にいつものように座る。
「今日は降りそうだね。」
「そうだな。」
差し出された新聞を見ながら智は答えた。
白羽 結翔がここのカフェを両親から引き継いでもう2年になる。立地のおかげもあるが、なんとかここまでやってきた。設楽 智は中学からの同級生で、何もなければ大体朝はここに来ている。智は結翔がずっと片思いしている相手・・・。
「いらっしゃいませ、おはようございます。」
「おはよう、結翔、おー、智もいたか。あー、モーニング間に合ってよかった。」
疲れ顔の杉並 薫が言った。
「おう、俺はもうそろそろ出るけどね。」
智は片手をあげると言った。
「今戻ったんだよ。会社戻る前にどうしてもここで休んでいきたくてさ。」
「え、朝まで仕事だったの?」
結翔が目を丸くする。
「システムメンテなんてね、夜中にやる仕事ばっかだよ。」
薫は苦笑しながら言った。
「まだ寝られないから濃いめ頼むよ。」
「うん、分かった。」
薫とは高校からの付き合い。当時は3人でいつもつるんでいた。高校卒業後はみんなバラバラな進路だったが、こうやって社会人になっても一緒に過ごせている。友人っていいなとつくづく結翔は思っていた。
「んじゃ、行ってくる。薫、ゆっくりしてきな。」
智は読んでいた新聞と500円玉を傍らに置くと、席を立った。
「行ってらっしゃい、気をつけて。」
「おう、気張っていけよ。」
二人は智を見送った。
「結翔よ~、おまえらまだくっつかんの?」
「な、何言ってるんだよ、薫!」
ぱーっと結翔の顔が赤く染まる。
「急に変なこと言わないでよ。智は彼女いるんだよ。」
「えっ?そうなの?・・・目覚めたわ。」
薫は驚いて声を上げた。
「薫、うるさい・・・。」
周りに視線に気がついて薫は小さくなった。
「あいつ昔から変わらないな・・・。」
薫はフーッとため息をついた。
「ふぅ~、今日のランチは混んだね~。」
「今日のランチは結翔さんお手製ハンバーグですからね。人気メニューの時は混みますって。」
バイトに入っている大学生の三鷹 駿が食器を洗いながら言った。
「駿くんの分も残してあるからね~。」
「あざっす!結翔さんのまかない飯食べるためにバイトしてるようなもんですから。」
「ふふふ、僕の料理でよければ、いつでも作ってあげるよ。」
「そんなこと言うと毎晩押しかけますよ~。」
駿は笑った。
「あ、その役目は智さんか。」
「一人分も二人分も一緒だよ。」
「いやー、昼いただけてるだけで俺は幸せっす。」
駿は笑いながら言った。その傍らで結翔のスマホが鳴る。
「結翔さん、噂をしてたら、智さんからLINEだよ。」
「あ、ありがとう。」
結翔は手を洗うと、スマホを手に取った。
『飯いらない。』
「夕飯いらないってさ。」
「今日残業なんですかね~。」
「そうかもね。」
(ううん、残業じゃない。飯いらない。は彼女さんと会う日・・・。)
「それじゃあ、駿くん夕飯も食べてかない?一人寂しいからさ。あ、皐月ちゃんも食べてくかな。」
「あ、皐月にラインしときますよ。絶対食いますよ、あいつ。」
夕方からやってくるバイトの播戸 皐月と駿は仲がいい。詳しくは知らないが、趣味が合うらしく、よく二人で盛り上がっていた。
「皐月ちゃんとは仲いいけど、付き合ってるの?」
結翔は思わず気になっていたことを口にした。
「え、皐月と?ないないないない・・・・。」
駿は爆笑しながら言った。
「同士ではありますけど、ジャンル違いますからね~。」
「???」
「いいんです、結翔さんは分からなくて。」
駿はまた笑った。
「なんか、仲間はずれな気分なんだけど。」
「いえいえ、結翔さんがいないと僕らの仲は成り立たないですから。俺たちはいつも結翔さんに癒やされてるんですよ。ずっと見守ってますから。」
「なにそれ、へんなの。」
言うや否やドアが開く。
「夕飯食べれるって?!」
「お疲れ様、今日は早いね、皐月ちゃん。だけど開口一番それなの?」
「あ、すいません。こんにちは、結翔さん。私食べたことなかったから、ちょっとうれしくて。」
皐月は笑いながら言った。
「んじゃ、昼飯もこれからなんだけど、食べる?」
「え?!弁当食べてきたけど、いただきます!!!」
「どんだけ食い意地張ってるんだよ、皐月。」
3人は笑った。
もうすぐ21時になる。最後のお客様が席を立ったので、皐月はいつものように正面の営業中の札を準備中に替えた。
「二人ともお疲れ様。今日もありがとう。それじゃあ、夕飯準備するね。」
結翔はあらかじめ漬け込んでいた豚肉を冷蔵庫から引っ張り出した。
「生姜焼きですか?!」
「さすが鋭いね、駿くん。あ、女の子にはきついかな?」
「ふふふ、その辺の女子とは一緒にしないでください。ほんとは智さんに用意していたものなんですよね?」
皐月はニヤニヤしながら言った。
「ま、そうなんだけどね。」
少し顔を赤らめながら結翔が言った。駿と皐月の二人はニヤニヤしながらお互いの顔を見る。
「すぐ出来るからね。」
「んじゃ、俺はご飯とお味噌汁準備しますね。」
結翔は手際よく料理を進めていった。
「智さんとはいつからの知り合いなんですか?」
生姜焼きとご飯をかき込みながら駿が言った。
「え?」
「なんか、気心知れてる付き合いに見えるから、古いのかなって思って。」
今度は皐月が言った。
「そうだね、智と初めて会ったのは中学に入ったときだな・・・。」
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