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目覚め15にしおりをはさみました!
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目覚め15
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魔法は使えない。武器も手元にはない。万が一デイガーの攻撃を躱せたとしても、後ろにはあの魔物が迫っている。もはやアグルムにもトカゲにも、敵の攻撃を防ぐ手段はなかった。
アグルムが、少年を抱く腕に力を籠める。それは、なんとしてでもこの子だけは守らなくてはならないという思いの表れだったのだろう。だが、その行動が無意味なことは、誰よりもアグルムが理解していた。
迫りくるデイガーの刃を前に、せめてもの足掻きだと敵の目を睨む。そしてデイガーの握る切っ先が、アグルムの喉を掻き切ろうとした、その刹那――――
アグルムの足元から突如炎が噴き上がり、デイガーに襲い掛かった。
使役魔に引かれ、間一髪でそれを避けたデイガーが、驚愕の表情を浮かべてアグルムを見る。それは少年やトカゲも同じで、二人とも信じられないようなものを見る目をアグルムに向けていた。
だが、アグルムは違った。己の足元から噴き上がる炎を見てから、自分の両手へと視線を落とす。そして彼は、ああ、と呟いた。
「いや、さすがはランファ王。まさかここまで忘我の境地に至れるものとは」
その声に、少年は目を丸くしてアグルムを見た。少年はこの声を知っている。知らない筈がない。
アグルムの身体が、まるで陽炎のようにゆらゆらと揺らぐ。そして、唐突にとろりと溶け出したそれは、見る見るうちに全く異なる姿へと変わっていった。
アグルムよりもずっと厚みのある身体に、くすんだ赤銅の髪。ため息が出るほどに美しい金色の瞳の中では、燃ゆる炎がちらちらと揺れている。
「……あ、」
炎を纏った男を見つめる少年の目が、まるで恋に溺れる乙女のように甘く蕩けた。
「…………あなた……」
小さく漏れた少年の呟きに、“アグルムだった”男はゆるりと笑んだ。
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