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共鳴9にしおりをはさみました!
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共鳴9
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「良かった。戻った、ね」
なんだったんだろうね、と問いかけてみたが、答えはない。もしかすると、王には自覚がないのかもしれない、と少年は思った。
そんな少年の頬に、王の手が伸ばされる。そのまま頬を包み込んだ掌に少年が動揺していると、そこでようやく王が口を開いた。だが、そこから言葉が発されることはなく、何度か開いては閉じてを繰り返したあと、結局彼は押し黙ってしまった。
珍しいを通り越して初めて見るその様子に少年は驚いたが、同時に身体の奥底がむずむずするような不思議な気持ちになった。
なんだかいたたまれなくなった少年がそっと視線を落としたが、それでも王は何も言わない。何も言わずに、ただ少年を抱き締めた。こんなにも強く抱き締められるのは初めてだったので、少年はまた少しだけ驚いてしまった。
そして、ただただ自分を抱き締めて離さない腕に、あつい、と胸中だけで呟く。とてもあつい。耐えられないほどに。けれど、不思議と心地は悪くなかった。
大きな身体に、そっと頬を摺り寄せる。手の自由が効けば良かったのだが、王の腕がそれを許さなかったのだ。
そんなことをしながら、少年は目を閉じてゆっくりと全身の力を抜いていった。まだ、疲労が抜けきっていないのだろう。目覚めたときに感じていた気怠さは色濃く残っている。そこにこの体温を与えられてしまうと、気を抜いた心が一気に睡眠を求めるのも仕方がないことだった。
この王と出逢うまでは、他人の温もりなど忌避すべきものでしかなかったというのに、よくもまあここまで変わったものだ、などとひとりごちながら、少年は少しだけ笑った。今ならば、さっきの夢の続きが見られそうだ。
優しい微睡に沈んでいく意識の中で、そして少年は願う。
どうかこの人にも、同じ夢が訪れますように、と。
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