アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
34にしおりをはさみました!
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
- しおりがはさまれています
-
34
-
「毎年神社で夏祭りやるじゃん?あれで演奏するバンド募集してるらしいんだけど、参加しない?」
……浅ましい自分を恥じた。
そりゃそうだよな。あんなの気の迷いでしかないし──。
「コピーバンドでもいいの?」
「良いって書いてた。ほら」
そういって日崎はスマホを見せた。
「他の二人が良いなら俺は賛成」
「たぶん良いって言うだろ」
開催日は8月最初の日曜日。二人ともバイトは入ってないはず。
最近は2人とも喋れるようになってきて、日崎が信頼しているだけあって、面白いやつらだってわかってきた。
ラインの友だちリストにも2つのアカウントが増えている。
──ギターがなければ、音楽がなければ、絶対交わらなかった友だち。音楽の力はこういうところにもあるのかもしれない。
「北田いったことある?」
「小学生の時は毎年姉ちゃんに連れていかれてた」
1人1回のスーパーボールすくい要員としてだけど。
そう言うと日崎は笑って「あれ全然とれないよね」と言った。
俺も全然とれなくて、姉ちゃんが半泣きの真奈と俺を必死になだめてた記憶がある。
「オレも兄貴と行ってたなー。兄貴射撃すげーうまくてさ、オレが欲しいって言ったやつ毎年とってくれたんだよね」
昔を懐かしむ日崎の記憶は、もちろん俺の知らない頃にあって、今ここにあるはずの横顔も、誰か知らない人の横顔に見えた。
日崎のお兄ちゃんか──。きっと何年か前の昼休みにこのベンチに座ってたのは日崎のお兄ちゃんなんだろうな。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
34 / 71